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家族が逮捕されたときの初動対応:72時間以内にすべきこととは?

ある日突然、家族が警察に逮捕されたと連絡が入ったら、誰でも混乱し、どう行動すればよいのか分からなくなるものです。しかし、そんなときこそ冷静な判断と迅速な対応が求められます。

逮捕後の72時間は、家族の今後を大きく左右する極めて重要な時間帯です。この記事では、家族が逮捕された際に取るべき初動対応と72時間以内にやるべきことを、わかりやすく解説します。

適切な対処をすることで、家族が早期に釈放されたり、不起訴になったりする可能性を高めることができます。まずは基本から順に確認していきましょう。

目次

家族が逮捕されたらまずするべき初動対応とは?

逮捕の連絡を受けた直後に、家族として取るべき基本的な初動対応について説明します。

逮捕された警察署・日時・容疑を確認する

まず最初に確認すべきなのは、「誰が」「いつ」「どこの警察署に」「何の容疑で」逮捕されたのかという情報です。

この情報がないと、弁護士に相談するにも対応が遅れてしまいます。警察から連絡が来ることは稀であり、多くの場合は本人から一報があるか、突然の連絡に驚くことが多いでしょう。

可能であれば、連絡をくれた警察官の名前や所属部署もメモしておくと後の対応がスムーズになります。

曖昧な情報しか得られなかった場合は、近くの警察署に問い合わせることも検討しましょう。

弁護士に早急に接見を依頼する

次にするべきことは、弁護士に連絡して速やかに接見(面会)を依頼することです。

逮捕された本人は、弁護士以外との面会が制限されることがあるため、まずは弁護士が本人の状況を確認し、アドバイスを与える必要があります。

刑事事件に詳しい弁護士を選ぶことが重要です。法テラスなどを利用すれば、無料で弁護士を紹介してもらえるケースもあります。

時間が経つほど、取調べが進み本人が不利な供述をしてしまうこともあるため、接見のスピードが鍵となります。

学校や職場への連絡を検討する

逮捕によって出勤や登校ができなくなる場合、学校や職場への連絡も考えなければなりません。

ただし、逮捕事実を伝えることで不利益を被ることもあるため、弁護士と相談のうえ慎重に行動することが大切です。

本人がすぐに釈放される可能性がある場合、あえて理由をぼかして「体調不良」「家庭の事情」などの説明にとどめることも方法の一つです。

焦って連絡することで、社会的信用や今後の立場を不必要に悪くしてしまう恐れもあります。

生活必需品や現金を差し入れる

逮捕された本人は、私物が制限され、必要なものが手元にない状況に置かれます。

現金、眼鏡、下着などの生活必需品を警察署に差し入れることができますが、差し入れ可能な品物は警察署ごとにルールが異なるため、事前に確認が必要です。

手紙や本も受け取ってもらえる場合がありますが、内容が検閲されることもあるため注意が必要です。

また、現金の差し入れは生活費や雑費に充てられるため、本人の安心にもつながります。

家族が逮捕された直後の72時間が大切な理由

逮捕から勾留までの72時間は、今後の刑事手続きの流れを左右する重要な時間です。この間に何をするかで、その後の展開が大きく変わってきます。

勾留されるかどうかが決まる重要な期間だから

逮捕された直後、警察は48時間以内に事件を検察に送致するかを判断します。

そして、検察はその後24時間以内に勾留請求をするか否かを決めます。つまり逮捕から72時間以内に「勾留」されるか「釈放」されるかの分かれ道が来るのです。

この段階で釈放されれば、その後起訴されずに事件が終わる可能性も高まります。逆に勾留されると、最大で20日間もの拘束が続くことになります。

このタイミングで適切な弁護士対応がなされているかが非常に重要なのです。

早期に弁護士が動くことで釈放の可能性が高まるから

弁護士が早い段階で接見し、必要な主張や証拠の提出、検察官への意見書の提出などを行うことで、検察や裁判官に「勾留の必要がない」と判断させることが可能になります。

家族側がいかに迅速に動き、適切な法的支援を用意できるかが釈放の鍵となります。

逮捕直後の情報が乏しい時期に弁護士の力を借りることは、不安を和らげるためにも非常に有効です。

警察や検察との間に弁護士が入ることで、本人の精神的な負担も大きく軽減されます。

誤った供述を防ぐために弁護士の助言が必要だから

取り調べの場では、精神的に追い詰められた状態で無理に自白させられることがあります。

自分に不利な供述をしてしまうと、後から撤回しても信用されにくくなってしまうのが現実です。

弁護士が早期に面会し、「話すべきこと」「話さないほうがよいこと」などを具体的にアドバイスすることで、誤った供述を防ぐことができます。

本人が冷静さを保ち、権利を守るためにも、弁護士の接見は欠かせません。

家族が逮捕されたときの初動対応として弁護士に相談する重要性

初動で弁護士を選び、相談することは、逮捕された家族の今後を大きく左右します。単なる法律相談にとどまらず、具体的な行動を共に進めるパートナーとなります。

弁護士は逮捕直後から接見できるから

弁護士は、逮捕された本人と早期に面会することができます。これは、家族や友人にはできない非常に大きな権利です。

本人の状況を直接確認し、法律的な助言を与えることができるのは弁護士だけです。

また、接見によって本人の不安を和らげることができる点でも、弁護士の役割は大きいです。

家族が面会できるようになるまでには時間がかかることが多いため、まずは弁護士による早期の接見が不可欠です。

弁護士が早期釈放や不起訴に向けて活動できるから

逮捕後すぐに弁護士が活動を始めることで、検察官への働きかけや、勾留の阻止、早期釈放に向けた準備が進められます。

また、必要に応じて示談交渉や証拠収集、不起訴に向けた対応も同時に進めることができます。

事件の種類によっては、早期対応がそのまま不起訴や執行猶予につながることもあります。

初動が遅れたことによって事態が悪化する例もあるため、迅速な弁護士選びが非常に重要です。

弁護士が家族との橋渡し役となれるから

逮捕直後、家族は本人と自由に連絡を取ることができません。しかし、弁護士はその間の情報伝達や精神的な支えとなる橋渡し役を担ってくれます。

例えば、本人が今どんな状態にあるのか、どんなことを考えているのか、反省しているのかといった情報を、家族に伝えてくれるのです。

また、家族が本人に伝えたい言葉や想いを、弁護士が本人に伝えることもできます。これはお互いの安心感を大きく高めてくれます。

孤独で不安な状況のなかで、信頼できる弁護士が間に入ってくれることは、本人と家族の両方にとって大きな救いとなるでしょう。

逮捕から72時間の流れと家族が取るべき初動対応

ここでは、逮捕から勾留決定までの72時間の流れと、その間に家族が行うべき具体的な行動を解説します。

逮捕から48時間以内に検察へ送致される

逮捕後、警察は最大48時間以内に検察に事件を送致(そうち)するかどうかを決めます。

この間、警察によって取り調べが行われ、容疑の確認や供述の聴取が進みます。

家族としてはこの間に弁護士に接見を依頼し、状況把握とアドバイスを受けることが極めて重要です。

また、差し入れの準備や、必要書類の確認なども同時に進めておくと良いでしょう。

検察が24時間以内に勾留請求を判断する

警察から送致された事件を受けて、検察官は24時間以内に「勾留請求をするかどうか」を決定します。

勾留請求とは、さらに10日間(延長を含めると最大20日間)の身柄拘束を求める手続きです。

ここで釈放されるか、勾留されるかが決まるため、弁護士が検察に対して意見書を出すなどの活動が非常に大切になります。

家族としても、身元引受書や誓約書の準備をこの段階までに整えておく必要があります。

勾留が決定すると最大20日間拘束される

勾留が認められると、まずは10日間の勾留が開始されます。さらに、検察官の要請によって最大で10日間の延長が認められるため、合計20日間も拘束される可能性があるのです。

この間にも取り調べは続き、供述や証拠が集められていきます。本人が疲弊して精神的に追い込まれることもあるため、定期的な弁護士の接見が大切です。

また、家族としては、示談交渉の有無や、今後の生活の準備なども考えていかなければなりません。

この間に弁護士が釈放や不起訴を目指す

勾留期間中も、弁護士は諦めることなく、釈放や不起訴を目指して活動を続けます。

証拠が不十分であれば不起訴に、被害者との示談が成立すれば釈放に向かうことも少なくありません。

家族は弁護士と綿密に連携を取り、必要な協力を惜しまないことが求められます。

また、今後の裁判を見越して、本人の反省の気持ちや社会復帰の計画を整えておくことも、弁護士の活動にとって力強い後押しになります。

家族が逮捕されたときにやってはいけない初動対応とは?

家族が逮捕された際、焦りや不安から間違った対応をしてしまうこともあります。以下のような行動は、状況を悪化させる原因にもなるため注意が必要です。

警察に無理に面会を求める

逮捕直後の面会は、基本的に弁護士以外は制限されています。家族であっても、すぐに面会できるとは限りません。

無理に面会を要求したり、警察に詰め寄ったりすると、警察との関係が悪化する可能性があります。

冷静に接し、まずは弁護士を通じて状況を確認し、対応するのが適切です。

感情的にならず、法的な手続きを理解した上で行動しましょう。

勝手に職場や学校に連絡する

家族が逮捕されたことで、「すぐに連絡しなければ」と考えてしまうかもしれません。

しかし、不用意な連絡は本人の社会的信用を損ねる原因になることがあります。

特に釈放される可能性がある場合、誤解を招く形で伝わると今後の復職・復学に悪影響を及ぼすことも。

必ず弁護士と相談し、最適なタイミングや伝え方を考えるようにしましょう。

本人に手紙や物を無断で差し入れる

本人に励ましの手紙や必要な物品を差し入れたいと思うのは自然な感情です。

ですが、差し入れには警察署ごとのルールがあり、無断で送ったり持参しても受け取ってもらえないことがほとんどです。

また、内容によっては検閲の対象となることもあるため、感情的な文面や事件に関する内容は避けましょう。

何を差し入れてよいのか、弁護士や警察署に確認してから行動するのが賢明です。

感情的になって警察とトラブルを起こす

家族が逮捕されれば、誰しも動揺するのは当然ですが、感情的になって警察に対して怒りや抗議をぶつけてはいけません。

警察官も公務に従って対応しており、感情的な態度は逆効果になることがほとんどです。

冷静に対応することが、家族のためにも一番有効な支援になります。

言いたいことがある場合は、弁護士を通じて正式に伝える方法を取りましょう。

未成年の家族が逮捕された場合の72時間以内の初動対応

未成年者が逮捕された場合、成人とは異なる「少年事件」として特別な手続きが進められます。そのため、初動対応もそれに応じた注意が必要です。

少年事件として家庭裁判所に送致される

未成年者が逮捕された場合は、原則として家庭裁判所に送致されることになります。

通常の刑事裁判ではなく、「少年審判」という形式で処遇が決まるのが特徴です。

逮捕から原則48時間以内に家庭裁判所への送致が行われ、その後の対応が迅速に求められます。

少年事件では、本人の更生が第一に重視されるため、周囲の環境整備や反省の姿勢も重要になります。

保護者が身元引受人となる準備をする

少年事件では、家庭環境や保護者の態度が大きく影響を及ぼします。

保護者がしっかりと本人を指導・監督する意志を示すことで、在宅調査や保護観察の選択につながる可能性があります。

そのためには、身元引受人としての誓約書や家庭環境の報告など、必要な書類の準備が欠かせません。

家庭裁判所の審判に向けて、できる限りの準備を整えておきましょう。

弁護士に少年事件の経験があるか確認する

少年事件は成人の刑事事件とは異なる手続きが多く、特有の対応が求められます。

そのため、弁護士を選ぶ際は「少年事件に詳しいかどうか」を必ず確認しましょう。

少年審判では更生の見込みや生活環境が重視されるため、弁護士の経験と判断力が重要です。

少年事件に強い弁護士であれば、家族へのアドバイスや、裁判所に対する適切な書類の準備支援も行ってくれます。

家族が逮捕されたときに必要な72時間以内の書類・準備とは?

逮捕された家族を早期に釈放させたり、裁判を有利に進めたりするには、初動での書類準備や費用の確認が必要です。

身元引受書や誓約書を準備する

勾留の回避や早期釈放を目指すためには、家族が「今後しっかりと本人を監督する」という意思を示す身元引受書や誓約書が重要です。

これは、家族が責任を持って本人の社会復帰を支える姿勢を表明するもので、裁判官や検察官の判断材料になります。

弁護士と相談しながら、内容を整え、提出タイミングを調整しましょう。

特に身元引受人となる人物の社会的信頼性も問われるため、誰が書くかも重要なポイントです。

示談金の準備を進める

被害者が存在する事件では、示談の成立が不起訴や減刑につながる大きな要因となります。

その際に必要となるのが示談金の準備です。金額や支払い方法は、被害者側の希望や事件の内容によって異なります。

弁護士を通して示談交渉が行われるため、家族としてはできる限り柔軟に対応できるよう、ある程度の資金を用意しておくことが望まれます。

誠意を見せることが何よりも大切であり、それが結果的に本人にとっても最良の結果を生む可能性があります。

弁護士費用の確認と準備をする

弁護士を依頼する際には、相談料や接見費用、示談交渉費、着手金など様々な費用がかかる場合があります。

どのような費用がかかるのか、事前に見積もりを出してもらい、無理のない範囲で準備することが大切です。

また、経済的に余裕がない場合は、法テラスを活用して費用の立て替えや無料相談を受けられる制度もあります。

弁護士選びと並行して、費用についての計画も立てておくことで、迅速かつ適切な対応が可能になります。

家族が逮捕されたときの初動対応でよくある質問とその答え

ここでは、実際に多くの人が疑問に思う初動対応に関する質問と、その答えをまとめました。

逮捕された家族にいつ会えるの?

逮捕後72時間以内は、原則として家族は本人に面会することができません。この間は弁護士のみが接見可能です。

72時間以降も、勾留が決定した場合は「接見禁止」が付けられることがあり、その場合も家族との面会は制限されます。

面会できるかどうかは、警察署や検察、裁判所の判断によるため、弁護士を通じて確認しましょう。

接見禁止が解除されれば、家族も面会できるようになります。

差し入れは何ができるの?

差し入れ可能な物は、警察署によって異なりますが、基本的には現金・下着・文房具・メガネなどが多いです。

飲食物や刃物類、危険物は一切不可で、本や雑誌も内容によっては制限される場合があります。

持参する前に、警察署に連絡して「差し入れ可能な物」を確認することをおすすめします。

なお、差し入れた物は職員によって確認・検閲されることがあります。

弁護士がいない場合はどうすればいいの?

弁護士を知っていない場合でも、すぐに相談できる公的な機関があります。

例えば、法テラス(日本司法支援センター)では、刑事事件に関する無料の法律相談を受け付けており、必要に応じて弁護士の紹介や費用の立て替え制度も利用可能です。

また、逮捕後に当番弁護士制度を利用すれば、1回限り無料で接見をしてくれる弁護士が派遣されます。

早急な対応が必要なため、できるだけ早く法テラスや弁護士会に連絡を取り、支援を受けましょう。

逮捕されたことは報道されるの?

事件の内容や社会的な注目度によっては、逮捕が報道されることがあります。

特に、暴力事件や詐欺、性犯罪など社会的影響の大きい事件では、逮捕時点で実名報道されるケースもあります。

一方で、軽微な事件や初犯であり、社会的注目度が低い場合は報道されないこともあります。

報道に対しては法的な対応が難しい部分もあるため、名誉やプライバシーに関する対策は弁護士と慎重に進める必要があります。

まとめ:家族が逮捕されたときに必要な初動対応と72時間の行動

突然の逮捕は、家族にとって極めて大きなストレスとなります。しかし、その後の流れは「最初の72時間」の対応で大きく左右されます。

逮捕された際には、すぐに以下の行動を取りましょう。

まずは、逮捕された警察署・容疑・日時を確認し、弁護士に早急に接見を依頼します。学校や職場への連絡は慎重に行い、生活必需品や現金など必要な差し入れも準備します。

勾留されるか釈放されるかが決まる72時間の間に、弁護士と連携し、必要な書類や費用、示談交渉の準備を進めることが重要です。

また、誤った対応を避けるため、冷静に行動し、警察や検察とのやりとりはすべて弁護士を通じて行うことが基本です。

初動を正しく、冷静に行動することで、家族の未来を守る可能性が高まります。ぜひ本記事を参考に、万が一の事態に備えておきましょう。