日常の中の「もしも」に備える法律ノート

痴漢で現行犯逮捕された場合の流れ:勾留までの刑事手続を解説

痴漢で現行犯逮捕された場合、どのような流れで手続きが進むのかを正しく理解することは非常に重要です。

逮捕後の対応や取り調べの進行、弁護士のサポート内容など、知識の有無が今後の人生を大きく左右することもあります。

この記事では、痴漢で現行犯逮捕された場合の具体的な流れや、家族の対応、示談・不起訴の可能性、さらには前科がついた場合の影響までを詳しく解説します。

目次

痴漢で現行犯逮捕されたときの流れとは?

痴漢で現行犯逮捕された際は、その場で取り押さえられて警察に引き渡され、迅速に手続きが進みます。

現行犯逮捕の要件とその場での取押え

現行犯逮捕とは、犯罪が行われている最中、あるいは直後に行われる逮捕のことです。痴漢の場合、被害者や周囲の目撃者がその場で加害者を取り押さえ、警察官または一般人が逮捕に踏み切るケースが一般的です。

刑事訴訟法213条により、一般人による現行犯逮捕も認められています。そのため、必ずしも警察官だけでなく、駅員や通行人などが加害者を拘束し、警察に引き渡すという流れも多く見られます。

その場での状況把握や対応によっては、誤認逮捕のリスクもあるため冷静な行動が求められます。

取り押さえられた後は、現場に駆けつけた警察官により正式に現行犯逮捕され、警察署に連行されます。

任意同行や後日逮捕との違い

現行犯逮捕は「逃走のおそれ」や「証拠隠滅のおそれ」がなくても行うことができますが、任意同行はあくまで本人の同意を前提に行われます。

任意同行中に本人が拒否した場合には、警察も無理に拘束することはできません。一方、後日逮捕は裁判所の発する逮捕状に基づき、証拠が十分に揃った上で後日逮捕される形式です。

現行犯逮捕とそれ以外の手続きでは、進行のスピードや対応の自由度が大きく異なります。

そのため、現行犯逮捕の段階で速やかに弁護士に連絡を取ることが非常に重要となります。

痴漢で現行犯逮捕された後にまず起こること

警察署に連行された後は、48時間以内に一定の取り調べが行われ、検察への送致が検討されます。

警察署への連行と取り調べ(最大48時間)

現行犯逮捕されると、まず警察署に連れて行かれます。ここで行われるのが取り調べです。警察官は事件の概要を把握するために、本人の供述を記録し、状況を整理します。

取り調べの時間は法律で最大48時間までと定められており、これを超える拘束は原則として違法となります。

この間に、被疑者は弁護士との面会(接見)を求めることができ、黙秘権の行使や供述内容の検討について助言を受けられます。

供述によっては、冤罪の立証や釈放の可能性を左右するため、非常に重要な局面です。

供述調書の作成と警察から検察への送致(48時間以内)

警察での取り調べをもとに作成されるのが「供述調書」です。これは事件の記録として検察官に引き継がれる非常に重要な資料であり、のちの起訴・不起訴の判断材料になります。

供述調書は本人の署名があって初めて証拠能力を持つため、内容に納得できない場合は署名を拒否する権利もあります。

警察は、逮捕から48時間以内に事件を検察に送致する義務があるため、それまでに供述調書を完成させようと急いで取り調べを進めます。

送致後は、今度は検察官による判断が待っています。

痴漢で現行犯逮捕された後の取り調べの流れ

警察から検察に事件が送致されると、次は検察官による取り調べが始まり、その後の勾留の可否が決定されます。

警察による取調べの内容と対応方法

警察の取り調べでは、被疑者がどのような行為をしたか、被害者との関係性、事件発生時の状況などが詳しく問われます。

供述が一貫しているかどうか、矛盾点があるか、反省の態度が見られるかなどが重視されるため、対応には慎重さが求められます。

また、取調べ中に供述調書が作成され、本人の署名が求められますが、不利な内容が含まれる場合には署名を拒否することも可能です。

弁護士の助言を受けることで、不適切な取り調べに対する防御や、自身の権利を守るための行動がしやすくなります。

検察官による取り調べと勾留請求の判断(送致後24時間以内)

警察から送致を受けた検察官は、24時間以内に被疑者を取り調べ、必要に応じて勾留請求を行うか判断します。

ここで釈放される可能性もありますが、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合、裁判所に対して勾留を請求します。

この段階でも弁護士による意見書の提出や、勾留回避の交渉が行われることがあります。検察官の判断がその後の拘束の有無に直結するため、非常に重要な場面といえます。

取調べでは、供述内容に一貫性があるか、反省や謝罪の姿勢が見られるかも判断材料になります。

痴漢で現行犯逮捕された人が勾留されるまでの流れ

検察官が勾留を請求した場合、裁判所が勾留の可否を決定し、勾留が認められると最大20日間の身体拘束が可能になります。

検察官の勾留請求と裁判官による勾留質問

検察官は、裁判所に対し「勾留請求書」を提出し、勾留の必要性を説明します。裁判所はそれを受け、被疑者に対して「勾留質問」を行います。

この質問の場では、裁判官が被疑者本人に対して直接、事件や生活環境、逃亡や証拠隠滅の可能性について問いかけます。

勾留質問は非公開で行われ、通常は10分から15分程度で終了します。弁護士の立ち会いは認められていません。

この場で勾留が必要ないと判断されれば、そのまま釈放されることもあります。

勾留決定:原則10日+延長10日の拘束

裁判所が勾留を認めた場合、まずは10日間の身体拘束が認められます。捜査の必要があると判断されれば、さらに10日間の延長が可能です。

つまり、最大で20日間にわたって身柄を拘束されることになります。

この期間中、弁護士との面会は可能ですが、家族や知人との接見は禁止されることもあります。生活面や精神的な負担が非常に大きくなるため、早期の示談や釈放交渉が望まれます。

また、勾留の決定に対しては「準抗告」という法的手続きを使って異議を申し立てることも可能です。

痴漢で現行犯逮捕された場合に弁護士ができること

逮捕後、勾留されるか否か、あるいは不起訴に持ち込めるかどうかは、弁護士の迅速かつ的確な対応に大きく左右されます。

逮捕直後~勾留請求前に示談や釈放交渉

逮捕直後は、勾留されるか釈放されるかが決まる非常に重要な時間です。弁護士は、被害者との示談交渉や、警察・検察への釈放要請を行います。

特に示談が成立すれば、検察官が不起訴とする判断材料となるため、早期に動くことが極めて重要です。

また、本人が反省していること、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示す意見書を提出し、勾留の回避に努めることもあります。

弁護士の助言により、供述調書への署名を見送るといった対応も可能になります。

勾留請求後の準抗告や意見書提出による回避の試み

勾留が決定された場合でも、弁護士は「準抗告」という手続きを用いて勾留の取り消しを求めることが可能です。

また、被害者との示談が成立した場合には、勾留中であっても再度釈放を求める交渉を行うことができます。

勾留による長期拘束は、社会生活や就労に深刻な影響を及ぼすため、可能な限り短縮するための対応が求められます。

弁護士はその橋渡し役となり、家族や勤務先との連携を図ることもあります。

起訴後の保釈申請や示談交渉支援

万が一起訴された場合には、勾留からの釈放を求めて「保釈申請」を行うことが可能です。これは裁判所の判断によって認められるもので、保釈金の支払いが必要になります。

保釈後でも、裁判の判決が出るまでは被告人として出廷義務を負うことになりますが、自由の身として日常生活に戻れる可能性があるのです。

この間にも弁護士は、引き続き被害者との示談交渉を行い、有利な判決を得るための準備を進めます。

証拠や証言の確認、反省文の提出など、多方面からの支援が可能です。

痴漢で現行犯逮捕されたときに家族が知っておくべき流れ

家族にとっても、逮捕された事実は衝撃的であり、今後の生活に影響を及ぼします。正しい情報と対応が重要です。

家族が警察から受ける連絡と対応ポイント

通常、本人が未成年である場合や家族が連絡先として登録されている場合には、警察から逮捕の事実が伝えられます。

しかし、成人である場合は警察から自動的に連絡があるとは限らず、本人の同意がなければ情報開示されないこともあります。

家族が逮捕を知った場合、速やかに弁護士を手配し、接見を依頼することが重要です。

また、示談交渉のために被害者に対する誠意を示す準備や、本人の生活環境についての情報を整理することも求められます。

勤務先・学校への影響と家族の対応策

逮捕・勾留が長期化すると、勤務先への無断欠勤が続き、解雇や退学のリスクが高まります。

家族が代理で事情を説明する、診断書の提出を検討するなど、外部との橋渡しも必要となるでしょう。

また、被疑者の社会的信用を守るためにも、プライバシーへの配慮が重要です。SNSでの言及や不確かな情報の拡散には注意が必要です。

弁護士と連携し、示談の成立や早期の釈放を目指すことが、家族にとっても大きな支えとなります。

痴漢で現行犯逮捕された後に不起訴や釈放になる流れ

逮捕されたからといって必ず起訴されるわけではなく、不起訴となるケースも少なくありません。

在宅送致による釈放とその後の捜査

検察官が勾留の必要なしと判断した場合には、被疑者は「在宅のまま」捜査を受けることになります。在宅送致後も呼び出しによる取り調べや、書類の提出が求められることがあります。

身柄の拘束はなくなりますが、捜査が継続されるという点では、油断は禁物です。

示談成立や証拠不十分などにより、検察が不起訴と判断すれば事件は終結します。

この段階でも弁護士のサポートが重要で、示談書の作成や検察への意見書提出などを行うことが多いです。

示談成立による不起訴・略式起訴の流れ

被害者と示談が成立した場合、刑事処分を軽減させる大きな材料となります。検察官が起訴猶予とする判断を下す可能性が高まり、不起訴で事件が終わることもあります。

また、略式起訴による罰金処分となるケースもあり、公判を開かずに終了することもあります。

このような場合でも、前科がつかない可能性があるため、示談は極めて重要な意味を持ちます。

被害者の理解と謝罪の誠意が伝わるよう、弁護士の仲介が不可欠です。

痴漢で現行犯逮捕された人のその後の流れと前科の影響

起訴されたかどうかにより、その後の人生に及ぼす影響は大きく変わります。前科の有無は、社会的信用や生活基盤に直結します。

起訴の場合の公開裁判~判決(罰金・懲役・執行猶予)

起訴された場合、裁判が行われます。裁判では、被告人が有罪か無罪か、そしてどのような刑罰が相当かが審理されます。

痴漢事件では、罰金刑・懲役刑・執行猶予付きの有罪判決などが一般的です。

量刑は被害の程度、示談の有無、前科の有無などによって決まります。裁判が公開で行われるため、社会的信用へのダメージも避けられません。

そのため、起訴前の段階で示談を成立させることが極めて重要です。

不起訴・略式起訴後の記録と前科の有無

不起訴となった場合は、前科はつきません。略式起訴で罰金刑を受けた場合も、前科とはなりますが、公判が開かれずに済むというメリットがあります。

警察や検察に「前歴」として記録は残りますが、就職活動などでの大きな障害にはなりにくいとされています。

それでも精神的な負担は大きく、再発防止や周囲との信頼回復が求められます。

弁護士は、将来の生活設計を見据えたアドバイスも提供してくれます。

前科がついた場合の社会的影響(就職・海外渡航など)

前科がつくと、就職や転職の際に不利になることがあります。特に公務員や企業によっては、前科者の採用を制限している場合もあります。

また、海外渡航の際にはビザの取得が難しくなるなど、予想以上に多くの場面で不利益が生じる可能性があります。

社会復帰のためには、再発防止や信頼回復の努力が不可欠であり、家族や周囲の支援も大切です。

前科の影響は長期にわたるため、早期の示談や不起訴を目指すことがもっとも現実的な対策といえるでしょう。

まとめ:痴漢で現行犯逮捕された場合の流れを正しく知って備えよう

痴漢で現行犯逮捕された場合、その後の手続きや選択肢は非常に多岐にわたります。

逮捕後の行動が今後の人生を左右するため、早期に弁護士に相談し、正確な情報をもとに冷静に対応することが何よりも大切です。

家族や勤務先への影響、前科の有無による社会的影響なども踏まえ、できるだけ早い段階で示談を目指すのが理想的です。

この記事を通じて、万一のときに慌てず対応できるよう、基本的な流れとポイントをしっかりと理解しておきましょう。