日常の中の「もしも」に備える法律ノート

ブランド品の偽物を販売する法律リスクとは?罰則や罰金を解説します

フリマアプリやネットショップの普及により、誰でも簡単にブランド品を販売できる時代になりました。しかし、その一方で「偽物」のブランド品を扱ってしまい、知らずに法律違反に問われるケースが増加しています。

この記事では、ブランド品の偽物を販売した場合に考えられる法律リスクや罰則、知らずに売ってしまった場合の対応策まで、わかりやすく解説します。

「偽物と知らなかった」では済まされない場面もあるため、これから販売を考えている方や現在取引中の方にとって必読の内容です。

目次

ブランド品の偽物を販売するとどんな法律リスクがあるの?

ブランド品の偽物を販売した場合、複数の法律に触れる可能性があり、重い罰則が科されることがあります。

商標権侵害で10年以下の懲役または1000万円以下の罰金の可能性

ブランドのロゴやマークは「商標権」で保護されています。偽物を販売する行為は、商標権を侵害する行為に該当します。

商標法では、他人の登録商標を無断で使用した場合、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。

個人の出品でも罰則の対象となるため、「小さな取引だから大丈夫」とは言えません。

また、法人での取引ではさらに重い責任を問われるケースもあります。

不正競争防止法違反で5年以下の懲役または500万円以下の罰金のリスク

有名ブランドのデザインや見た目を真似た商品は「不正競争防止法」に違反する可能性があります。

この法律は、消費者をだますような製品の外観・表示などを規制するものです。

違反が認められた場合は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科されることがあります。
海外製品の仕入れや類似デザインの商品でも、場合によってはこの法律の対象となる点に注意が必要です。

詐欺罪に問われれば10年以下の懲役になるケースも

本物と偽って偽物を販売する行為は、「詐欺罪」に該当する場合があります。

詐欺罪は刑法に基づき、10年以下の懲役という重い刑罰が科される可能性があります。

「偽物です」と明示して販売したとしても、実際の商品が消費者の期待を著しく裏切る場合、詐欺と認定されるリスクがあるため要注意です。

また、被害者からの民事訴訟に発展する可能性もあります。

ブランド品の偽物販売に関わる主な法律とは?

偽物ブランド品の販売に関連する法律は複数存在します。ここでは、主要な法律を3つに絞って紹介します。

商標法:他人のロゴを無断使用する行為の禁止

商標法は、企業やブランドが登録したロゴや名前を他人が勝手に使うことを禁止する法律です。

偽物のブランドバッグやアクセサリーなどには、本物と同じロゴがついているため、商標権の侵害とされるのです。

販売だけでなく、輸入・所持しているだけでも処罰の対象になる場合があります。

「商標」とは目に見えるブランドの信用を保護するものなので、意識的な取り扱いが求められます。

不正競争防止法:有名ブランドを真似る行為の規制

たとえロゴがなくても、有名ブランドに酷似したデザインやパッケージは「不正競争防止法」に違反する可能性があります。

特に「形態模倣品」や「商品表示の混同」を狙った商品は、消費者を誤解させるため違法とされます。

「これはオリジナルデザインだから問題ない」と思っていても、実は違法行為になっているケースもあるのです。

この法律に違反すると、罰則だけでなく商品の差止めや損害賠償のリスクもあります。

刑法(詐欺罪):偽物を本物と偽って販売した場合

刑法の「詐欺罪」は、本物と偽って金銭をだまし取る行為を罰する法律です。

たとえば、偽物のブランド財布を「本物」と説明して販売し、代金を受け取った場合は詐欺罪にあたる可能性があります。

詐欺罪は刑事事件として扱われるため、警察による捜査や逮捕につながる可能性があります。

たとえ個人間取引であっても、騙されたと感じた購入者からの通報で事件化することがあります。

ブランド品の偽物を販売した場合の罰則と罰金の内容

法律違反が明確になった場合、具体的な罰則や罰金が科されます。それぞれの法律に基づく処罰内容を確認しておきましょう。

商標法違反:懲役1ヶ月〜10年+罰金1万〜1000万円または併科

商標法に違反した場合、懲役刑と罰金刑のいずれか、または両方が科される可能性があります。

軽微なケースでも1ヶ月の懲役や1万円の罰金が発生し、重度の違反では10年の懲役または1,000万円の罰金が科せられます。

さらに法人が関与した場合は、罰金が3億円まで引き上げられるケースもあるため、非常に重いリスクです。

この法律は非常に厳しく、偽ブランド品の製造・販売・所持に関わるすべての行為が処罰の対象となります。

商標法「みなし侵害」:懲役5年以下または罰金500万円以下

「みなし侵害」とは、商標を直接使っていない場合でも、商標と紛らわしい表示を使って販売した場合に違反とみなされるものです。

たとえば、「Chanel」の代わりに「Channel」など酷似したブランド名を使っている場合でも、みなし侵害に該当することがあります。

この場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科される可能性があります。

ブランドを真似たつもりがなくても、似ていると第三者が判断した時点で違法と見なされるリスクがあります。

不正競争防止法:懲役5年以下または罰金500万円以下

前述したように、ブランドの形や外観を模倣しただけでも「不正競争防止法」に違反することがあります。

この法律に違反した場合も、懲役5年以下または罰金500万円以下と、厳しい処罰が規定されています。

消費者の誤認や混同を狙った商品デザインは、違法とみなされやすいため十分な注意が必要です。

たとえ販売者に「だます意図がなかった」としても、結果的に消費者を混乱させた場合は罰則が適用される可能性があります。

詐欺罪:10年以下の懲役が科される可能性

詐欺罪に該当する場合、その罰則はさらに重くなります。

最大で10年以下の懲役刑となるため、非常に深刻な刑事責任を負うことになります。

とくに組織的に偽物販売を行っていたり、金額が高額な場合は、実刑判決となるケースも少なくありません。

被害者からの損害賠償請求も加わることで、経済的にも大きな打撃となるでしょう。

ブランド品の偽物販売がバレる仕組みと通報のリスク

「ばれなければ大丈夫」と考えるのは非常に危険です。現在では、複数のルートから偽物販売はすぐに発覚する仕組みが整っています。

購入者からの通報でフリマアプリ運営が通報・アカウント停止

メルカリやラクマなどのフリマアプリでは、ユーザーによる通報機能が設けられています。

購入者が「偽物かも?」と感じた場合、運営に通報すれば即座に調査が開始され、出品停止やアカウント停止となる可能性があります。

一度停止されたアカウントは復活できない場合もあり、販売者としての信頼を大きく失うことになります。

また、警察に通報されれば、アプリ運営会社が情報を提供し、捜査が進むこともあります。

税関の輸入検査による差し止め・没収の仕組み

海外から偽物ブランド品を仕入れようとした場合、日本の税関での検査によって差し止められたり没収される可能性があります。

偽物の疑いがある商品は税関で止められ、そのまま没収されたり警告書が送られるケースがほとんどです。

税関はブランドと提携して鑑定を行っているため、プロが目利きをして偽物を見破ります。

個人であっても、大量輸入や頻繁な仕入れがあると、刑事処分の対象となるリスクが高まります。

警察や捜査機関による摘発、インターネット取引の監視強化

現在では警察や消費者庁などの公的機関も、インターネット上のブランド品取引を常に監視しています。

悪質な販売者は摘発の対象となり、突然捜査が入ることもあります。

特に継続的に偽物を出品していたり、大量販売している場合は、「営利目的」と判断され刑事事件に発展しやすくなります。

警察はアプリ運営会社から取引履歴を取得して調査するため、過去の出品内容も確認される可能性があります。

知らずにブランド品の偽物を販売してしまった場合の法律リスク

中には「偽物とは知らずに販売してしまった」というケースもあります。しかし、それでも法律上の責任を問われることはあります。

故意が認められなければ不起訴になる可能性あり

もし販売者に「偽物だと知らなかった」ことが証明できれば、刑事処分を免れる可能性もあります。

そのためには、仕入れ先の信頼性や取引履歴、真贋確認の努力を証明する資料が必要です。

警察や検察は「故意があったかどうか」を重視するため、適切な証拠があるかどうかで結論が変わります。

「まったく確認せずに売った」場合は、結果的に故意と判断されるリスクもあるため要注意です。

故意が疑われれば商標法違反や詐欺罪で処罰されるリスク

「本物だと思っていた」という主張だけでは、十分な弁解とは認められません。

買った時の価格が不自然に安い、信頼性のないサイトから仕入れたなどの事情があれば、故意が疑われる可能性があります。

また、複数回同じような取引をしていると、「知っていたはず」と判断されやすくなります。

その場合、商標法違反や詐欺罪として、正式に起訴される可能性があります。

立証には「知らなかった」証拠が必要で弁護士の相談が必須

「知らなかった」と主張するには、それを裏付ける証拠が求められます。

仕入れ先の領収書や取引履歴、確認メール、鑑定書などがあれば、自分の無実を証明する材料になります。

しかし、それらを自分一人で判断するのは難しいため、速やかに弁護士に相談するのが得策です。

専門家に相談することで、最善の対応策が見つかる可能性が高まります。

ネットでブランド品の偽物を販売した場合の法律リスクとは?

フリマアプリやECサイトを通じた販売でも、リアル店舗と同じように法律の対象になります。むしろネット上では履歴が残るため、摘発されやすい特徴があります。

ネット出品だけで所持目的と見なされる場合も

偽物ブランド品を「売ろうとした」だけで、商標法上は「所持目的の販売」と見なされることがあります。

つまり、まだ販売していなくても、出品した時点で処罰の対象になるのです。

ネットでは写真と説明文が証拠として残るため、言い逃れは難しくなります。

「まだ売れていないから大丈夫」という考えは通用しません。

メルカリ等によるAI鑑定や強制削除の流れ

最近では、フリマアプリ側も偽物対策を強化しており、AIによる自動鑑定システムを導入しています。

AIが画像や商品説明文から偽物の疑いを検出すると、自動的に出品が削除されたり、アカウントが停止される場合があります。

また、運営側がブランドに通報することで法的措置が進むこともあります。

ユーザーの評価が低下し、今後の販売活動に悪影響を与える恐れもあります。

取引記録から捜査対象になりやすい点

ネット上の取引はすべて記録に残ります。警察や検察は、運営会社に照会して出品者のIPアドレスや住所、電話番号を簡単に取得できます。

そのため、匿名で出品していても簡単に身元が割り出されてしまいます。

悪質な場合は、突然の家宅捜索や逮捕という事態も起こり得ます。

ネット販売は証拠が残りやすい分、オフラインよりも摘発されやすいという点に注意が必要です。

海外から仕入れたブランド品の偽物を販売する法律リスクについて

「海外から仕入れればバレにくい」「個人輸入なら問題ない」と考える人もいるかもしれませんが、それは非常に危険な誤解です。

税関で没収+警告書送付、再犯は刑事処分も

偽物ブランド品を海外から輸入しようとすると、税関での検査により差し止めや没収の対象となります。

最初の違反では警告書が送付されるだけの場合もありますが、繰り返すと刑事処分の対象になる可能性があります。

「個人で使うために輸入した」と主張しても、販売の意図が見られれば所持目的とされ、罰則を受けることがあります。

特に商標権者からのクレームが入れば、厳格に処理される傾向があります。

個人輸入でも模倣品は原則受け取れず没収の対象

日本では商標法に基づき、個人利用目的であっても偽物は輸入できません。

仮にAmazonや中国のサイトから購入したとしても、偽物だと判断されれば自動的に没収され、手元には届かなくなります。

一度没収された記録は税関に残るため、その後の取引にも影響を及ぼすことがあります。

「個人輸入だから大丈夫」という考えは通用しませんので注意が必要です。

仕入れ目的で大量輸入すると商標法の準備行為に該当

もし偽物ブランド品を大量に仕入れていた場合、それだけで「販売目的」と見なされ、商標法違反の準備行為として摘発されることがあります。

具体的には、20点以上や高額なブランド品などをまとめて仕入れていると、その意図を疑われやすくなります。

税関職員や捜査機関はその数量や頻度、仕入れ先の信頼性などを総合的に判断して処分を決定します。

販売の意思があることを示す証拠が見つかれば、未販売でも処罰されるリスクがあります。

ブランド品の偽物を販売しないために注意すべきポイント

うっかり違法行為に関わらないためには、日ごろからの情報収集と慎重な判断が欠かせません。以下のポイントを守ることで、リスクを大幅に下げることができます。

正規の販売ルート・認証マークを確認する

本物の商品を扱うには、正規代理店や信頼できるルートから仕入れることが最も重要です。

ブランドによっては独自の認証マークやQRコード、ホログラムなどを導入しているため、購入時にはそれらの確認が必要です。

また、正規代理店では仕入れ証明書や請求書も発行されるため、記録として残すようにしましょう。

怪しい出品者やサイトからの購入は避けるのが賢明です。

商品を安すぎる価格で仕入れない

あまりにも安い価格でブランド品を購入できる場合、偽物である可能性が高いです。

市場価格より極端に安い商品には必ず理由があり、それが偽物である可能性を含んでいます。

正規品は品質管理やライセンス料があるため、一定の価格が必要になります。

安すぎる商品は一見魅力的ですが、その裏に潜むリスクを忘れてはいけません。

フリマアプリには偽物判定機能があることを知る

最近のフリマアプリでは、AIによる偽物鑑定機能が強化されており、自動で商品を分析しています。

画像や商品説明文の内容から、偽物と判断されると出品停止や強制削除が行われます。

ユーザーが偽物を通報すれば即時対応されるため、信頼を損ねる結果にもつながります。

一度信用を失うと、以後の販売活動が困難になるリスクもあるため注意が必要です。

弁護士や専門家に事前相談してリスクを把握する

少しでも「これは本物なのか?」と疑問に思ったときは、自己判断せず、法律の専門家に相談するのが賢明です。

特に商標法や不正競争防止法に詳しい弁護士であれば、販売可否の判断やトラブル時の対応策までアドバイスしてくれます。

安心して販売活動を行うためにも、事前に専門知識を得ることがトラブル回避の近道となります。

まとめ|ブランド品の偽物販売による法律リスクと罰則・罰金

ブランド品の偽物を販売することは、たとえ小規模な個人取引であっても重大な法律違反に該当します。

商標法、不正競争防止法、刑法(詐欺罪)など複数の法律が関与し、重い罰則が科されるリスクがあるのです。

また、「知らなかった」では済まされないケースも多く、証拠の提示や専門家のサポートが不可欠となります。

ネット取引の普及により、偽物販売の監視体制はますます強化され、摘発も迅速になっています。

今後、安心してブランド品を扱うためには、信頼できる仕入れ先を選び、事前に法律知識を身につけることが重要です。

万が一、偽物の疑いがある商品を扱ってしまった場合は、早急に弁護士に相談し、適切な対応をとるようにしましょう。

正しい知識と慎重な判断が、あなた自身を守る最大の武器となります。