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強盗罪とは?刑法で定められた構成要件・法定刑・窃盗罪との違いをわかりやすく解説

ニュースなどで「強盗事件」「強盗致傷」といった言葉を耳にすることがあります。しかし、実際に「強盗罪」とはどのような犯罪なのか、そして「窃盗罪」や「恐喝罪」とは何が違うのかを正確に理解している人は多くありません。

この記事では、刑法における強盗罪の定義・構成要件・刑罰の重さについて、法律の専門用語をできるだけわかりやすく解説します。また、2025年6月に施行される刑法改正(拘禁刑の導入)にも触れ、最新の法制度に沿って詳しく説明していきます。

万が一、自分や家族が関係してしまった場合に備え、法律の基礎知識として知っておくことは非常に重要です。この記事を通じて、強盗罪の全体像を正しく理解していきましょう。

強盗罪とはどんな犯罪?

まずは、刑法上で定められている「強盗罪」そのものの定義を確認し、どのような行為が犯罪として扱われるのかを整理していきます。

法律上の定義(刑法第236条)

強盗罪は、刑法第236条で以下のように定められています。

「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。」

(刑法第236条第1項)

つまり、単に他人の物を盗むだけでは「窃盗罪」となりますが、そこに暴行(身体への力の行使)や脅迫(恐怖を与える言動)が加わると「強盗罪」として扱われます。これは、被害者の身体や生命への危険を伴う重大な犯罪とされているためです。

また、第2項では「財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた場合」も強盗罪として処罰されると規定されています。これは「2項強盗」と呼ばれ、金品を奪わなくても金銭的利益を得る目的で暴行・脅迫を行えば強盗とされる場合があります。

「暴行又は脅迫」と「財物を強取」の関係

強盗罪の特徴は、「暴行・脅迫」と「財物の奪取(強取)」が時間的・場所的に密接に行われることです。たとえば、被害者を殴って財布を奪うような場合は明らかに強盗罪に該当します。

逆に、暴行や脅迫の後にしばらく時間をおいて物を取った場合や、暴行とは関係のない状況で物を取った場合は、強盗罪ではなく窃盗罪や恐喝罪にとどまる可能性もあります。このように、行為と結果のつながりがどれほど強いかが重要な判断ポイントになります。

また、「暴行・脅迫が相手の反抗を抑圧する程度であるか」という点も、強盗罪の成立に大きく関係します。単なる小突きや軽い言い争いでは、法律上「暴行」として認められない場合もあります。

典型的な事例:コンビニ強盗・銀行強盗など

ニュースで報道されるような「コンビニ強盗」「銀行強盗」などは、まさに刑法236条が想定する典型的な強盗罪です。たとえば、包丁や刃物を見せて「金を出せ」と脅し、店員が恐怖を感じて金を渡した場合、これは明確に「脅迫による強盗」となります。

また、実際に暴力をふるわずとも、相手に「命の危険を感じさせる」ような言動をすれば、脅迫と認定される可能性があります。つまり、物理的な暴力がなくても強盗罪は成立し得るのです。

一方で、酔って店員に「金を出せ」とふざけて言ったようなケースでは、状況によっては「脅迫」とは評価されないこともあります。行為者の意図や被害者の感じた恐怖の程度によって、犯罪の成立が左右される点が特徴的です。

どのような行為が強盗罪とされるかの判断基準

実際にどのような行為が「強盗」と評価されるかは、警察や裁判所が被害者の反応・行為の目的・暴行や脅迫の程度などを総合的に判断して決めます。

例えば、次のような行為は強盗罪として扱われる可能性があります。

  1. 被害者を殴って財布を奪う
  2. 刃物を見せて「金を出せ」と脅す
  3. 相手を押さえつけてバッグを取る

一方で、被害者に暴行を加えたが財物を奪う意思がなかった場合は「暴行罪」、脅して金銭を得ようとしたが暴行がなかった場合は「恐喝罪」とされるなど、目的と行為の組み合わせで罪名が変わります。

このように、強盗罪の成立には「暴行・脅迫によって財物を奪う」という要素が不可欠であり、両者が結びついているかどうかが最大のポイントといえるでしょう。

強盗罪と窃盗罪の違いをわかりやすく解説

ここでは、よく混同されがちな「強盗罪」と「窃盗罪」の違いを明確にし、それぞれの法定刑や判断基準を比較しながら詳しく解説します。特に、どのような要素が加わると窃盗から強盗に格上げされるのかを理解することが重要です。

窃盗罪の概要と法定刑の違い

「窃盗罪」は刑法第235条に規定されています。条文では「他人の財物を窃取した者は、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」と定められています。

つまり、窃盗罪は暴力や脅迫を伴わずに他人の財物を取る行為を指します。財布を盗む、万引きをする、自転車を無断で持ち去るといった行為が典型例です。

一方、強盗罪の法定刑は「5年以上の有期懲役」です。窃盗罪の「10年以下の懲役または罰金刑」と比べると、刑の重さがまったく異なります。暴行や脅迫が加わることで被害者の生命・身体に対する危険が高まるため、国家はより厳しい刑罰で処罰するのです。

「暴行・脅迫」があれば強盗罪となる理由

なぜ、暴行や脅迫を加えた途端に「窃盗」から「強盗」に変わるのでしょうか? それは、行為者の行為が単なる財産侵害ではなく、被害者の身体・自由への侵害も同時に発生するためです。

暴行や脅迫によって被害者が抵抗できなくなった状態で財物を奪う行為は、社会的に非常に危険です。したがって、刑法上では「暴行・脅迫を用いた財物の奪取」=強盗として、最も重い財産犯の一つに位置づけられています。

たとえ奪った金額が少額でも、暴力や脅迫の有無によって罪の重さは天と地ほど変わります。実際、500円を奪った場合でも、暴行を伴えば「強盗罪」として懲役5年以上の刑が科される可能性があります。

ひったくりで窃盗から強盗とされた裁判例

「ひったくり」は一見すると窃盗のように思えますが、判例によっては強盗罪が成立するケースがあります。例えば、被害者のバッグを引っ張った際に、被害者が転倒した場合などです。

この場合、行為者が「暴行するつもりはなかった」と主張しても、結果的に相手の身体に危害を加えたと判断されれば、裁判所は「暴行を用いて財物を奪った」と認定することがあります。

実際の裁判例では、女性のバッグを後ろから強引に奪い取ろうとして転倒させたケースで、裁判所は「被害者の反抗を抑圧する程度の暴行」と判断し、強盗罪を認定しました。

つまり、行為の結果として被害者が危険な状況に置かれたかどうかが、窃盗罪と強盗罪を分けるポイントになるのです。

事後強盗罪・昏睡強盗罪などの類型との違い

強盗罪には、基本形のほかにもいくつかの特別な類型があります。代表的なものが事後強盗罪昏睡強盗罪です。

まず「事後強盗罪」とは、最初は窃盗のつもりで盗みを働いたものの、その後に逃走や逮捕を免れるために暴行や脅迫を行った場合に成立する罪です。刑法第238条「窃盗が財物を取り返されるのを免れるために暴行又は脅迫をしたときは、強盗と同一の刑に処する」とあります。

また、「昏睡強盗罪」(刑法第239条)は、被害者を薬物などで眠らせた上で財物を奪う行為を指します。ここでは暴行や脅迫がなくても、被害者の抵抗を不能にする手段を使っているため、強盗と同じ刑が科されます。

このように、強盗罪には複数のバリエーションがあり、単に「暴力を使った窃盗」と考えるだけでは不十分です。行為の時点や目的、手段によって適用される条文が異なります。

強盗罪の構成要件とは?成立するための条件

次に、強盗罪が成立するために必要な要素を順番に整理していきます。刑法上の「構成要件」は、犯罪の成立を判断するための重要なチェックポイントです。

①実行行為(暴行・脅迫を用いる行為)

まず1つ目の要件は「実行行為」です。これは、被害者の反抗を抑圧する程度の暴行または脅迫を行うことを意味します。単なる口論や軽い接触では足りません。

例えば、拳で殴る、刃物を見せる、「殺すぞ」と脅すなどが該当します。これにより、被害者が抵抗できずに財物を渡す状況を作り出すことがポイントです。

なお、暴行・脅迫が被害者に対して直接向けられていなくても、第三者を通じて恐怖を与えるような行為でも成立することがあります。

裁判所は、暴行や脅迫の程度が「相手の反抗を抑えるに足るかどうか」を中心に判断します。これが「反抗抑圧要件」と呼ばれるものです。

②結果(他人の財物を奪うこと)

2つ目は「結果要件」、つまり実際に財物を奪う行為です。ここでいう「財物」とは、現金や貴金属、スマートフォン、車など、経済的価値のあるものを指します。

強盗罪が成立するためには、単に脅しただけでは足りず、実際に被害者の財産的支配を奪う行為が必要です。

また、犯人が現金を奪おうとしても、途中で警察に取り押さえられた場合は「強盗未遂罪」となります。刑法243条では「強盗未遂も罰する」と明記されています。

つまり、実際に奪ったかどうかに関係なく、暴行・脅迫の意図が明確であれば処罰される可能性が高いのです。

③因果関係・故意・不法領得の意思

3つ目の要件は、「暴行・脅迫」と「財物奪取」との間に因果関係があること、そして行為者に故意と不法領得の意思があることです。

「因果関係」とは、暴行・脅迫という行為が財物を奪う結果を直接引き起こしたかどうかを指します。たとえば、暴行と財物の奪取が偶然別々に起きただけであれば、強盗罪は成立しません。

「故意」は、「相手に暴行・脅迫を加えて財物を奪うつもりがあった」ことを意味します。本人が「奪うつもりはなかった」と主張しても、状況から明らかに財物奪取の意図が認められれば、故意が認定されることがあります。

そして「不法領得の意思」とは、他人の財物を自己のものとして利用・処分する意思のことです。単に借りるだけのつもりであれば該当しませんが、返す意思がなければ「不法領得」と判断されます。

②項強盗(財産上不法利益を得させる行為)について

刑法第236条第2項では、「財物を奪う」場合以外にも、「暴行・脅迫を用いて財産上の利益を得た者」も強盗罪に当たると定められています。これを「第2項強盗」と呼びます。

たとえば、脅迫して被害者に借金を帳消しにさせたり、契約を強制的に結ばせたりするようなケースです。この場合、直接物を奪っていなくても「財産上の不法利益」を得ているため、強盗罪と同じ刑罰が科されます。

裁判所は、こうした行為が「被害者の自由な意思によらない」取引であるかどうかを重視して判断します。暴行や脅迫があった時点で、被害者の判断の自由が奪われていれば、第2項強盗が成立する可能性が高いといえるでしょう。

つまり、強盗罪は「物を取る」だけでなく、「金銭的な利益を強制的に得る」行為全般を含む広い概念なのです。

「暴行」や「脅迫」とはどの程度を指すのか

強盗罪の成立において最も重要な要素が、「暴行」または「脅迫」があったかどうかです。しかし、どの程度の行為がそれに該当するのかは、ケースごとに異なります。ここでは、暴行・脅迫の具体的な基準を詳しく見ていきましょう。

暴行の具体例(身体的力の行使)

暴行とは、法律上「人の身体に対する不法な有形力の行使」を指します。つまり、殴る・蹴る・押す・突き飛ばすといった行為が該当します。

たとえ被害者に怪我がなかったとしても、相手の体に力を加えた時点で「暴行」が成立します。例えば、店員を押し倒してレジの金を奪う、腕をつかんで無理やりバッグを奪う、といった行為は典型的な暴行です。

また、拳を振り上げて威嚇する行為も、状況によっては暴行とみなされることがあります。被害者が恐怖を感じて抵抗できなくなった場合には、「反抗を抑圧する程度の暴行」と判断されるのです。

つまり、実際に傷害を与えなくても、被害者の自由を奪う力の行使があれば暴行として認定される可能性があります。

脅迫の具体例(「殺すぞ」「痛めつけるぞ」など)

脅迫とは、被害者に恐怖心を与え、反抗を困難にする言動を指します。たとえば、「殺すぞ」「痛い目に遭わせるぞ」といった発言や、刃物を見せつけて威嚇する行為が該当します。

脅迫の程度については、「被害者が現実的に恐怖を感じたかどうか」が重要な判断要素となります。単なる冗談や、相手がまったく怖がっていない状況では成立しません。

一方で、言葉に出さなくても、包丁を取り出して無言で相手をにらむなどの行為でも、明確な威嚇効果があれば脅迫とみなされることがあります。

つまり、被害者の心理的抵抗を奪う目的で恐怖を与える行為であれば、暴力を使わなくても「脅迫」に該当するのです。

「反抗できない程度かどうか」の判断基準

強盗罪の成立には、暴行・脅迫が「被害者の反抗を抑圧する程度」であることが必要です。軽い押し合いや単なる口論では、この要件を満たしません。

たとえば、被害者が力で抵抗できる程度の軽い接触であれば、強盗罪ではなく窃盗罪にとどまる可能性があります。逆に、相手が抵抗できないほどの暴力や脅しがあれば、強盗罪が成立します。

裁判所は、行為の内容だけでなく、被害者の年齢・性別・状況なども総合的に考慮します。高齢者や女性に対する軽い力の行使でも、結果的に抵抗を抑圧した場合には暴行として評価されます。

したがって、強盗罪の「暴行・脅迫」の判断は単純な基準ではなく、状況全体を見て慎重に判断されるのです。

恐喝罪など他罪との境界と注意点

暴行や脅迫があったとしても、被害者がまだ自由な意思で財物を渡している場合には「恐喝罪」にとどまることがあります。

恐喝罪は、脅迫や威圧によって財物を「交付させる」行為であり、被害者の意思が完全に奪われていない点が強盗罪との大きな違いです。つまり、被害者が自らの判断でお金を渡しているようなケースでは、恐喝罪が適用されます。

一方で、脅迫の内容が強烈で、被害者が反抗できない状態に追い込まれた場合には、恐喝ではなく強盗罪に格上げされます。

したがって、暴行・脅迫の「程度」と「被害者の心理的状態」の違いが、どの犯罪が成立するかを分ける重要なポイントになります。

強盗罪の法定刑と刑の重さ

ここからは、強盗罪に科される刑罰の重さについて解説します。刑法上、強盗罪は非常に重い犯罪として扱われ、執行猶予がつくことも稀です。

基本的な法定刑(5年以上の有期懲役)

刑法第236条によると、強盗罪の基本的な法定刑は「5年以上の有期懲役」です。有期懲役とは、1年以上20年以下の範囲で裁判所が刑期を定める懲役刑のことです。

この「5年以上」という下限は非常に重く、窃盗罪(10年以下の懲役または罰金)と比べると処罰の度合いが段違いです。実際、軽微な強盗事件でも執行猶予が認められないケースが多く見られます。

これは、強盗が単なる財産侵害ではなく、被害者の生命・身体への危険を伴う行為であることから、社会的非難が強い犯罪として扱われているためです。

また、被害者に怪我を負わせた場合などは、さらに重い「強盗致傷罪」が適用されます。

実務上の量刑傾向・執行猶予は認められにくい

実務上の裁判例をみると、強盗罪で執行猶予が付くケースは非常にまれです。初犯であっても、暴行・脅迫の程度や被害額、被害者への影響によっては実刑判決が下される傾向があります。

例えば、初犯でコンビニのレジから数万円を奪った場合でも、判決は「懲役5年6か月」など実刑となることが一般的です。暴行を伴う犯罪である以上、社会的影響が大きく、被害者の心理的ダメージも無視できません。

ただし、犯行が未遂に終わっている場合や、示談が成立して被害者が強く減刑を求めている場合には、量刑が軽くなることもあります。しかし、それでも執行猶予がつく可能性は極めて低いのが現実です。

刑法上の下限が「懲役5年以上」であるため、裁判所の裁量でも執行猶予(3年以下の懲役刑まで)を付与することが難しい構造になっているのです。

予備罪・事後強盗・昏睡強盗などの法定刑

強盗罪には、実際に犯行を行わなくても処罰される「予備罪」や、特殊な形態の「事後強盗罪」「昏睡強盗罪」があります。

まず、強盗予備罪(刑法第237条)は、強盗をする目的で凶器や変装具を準備した段階で成立します。この場合でも「2年以下の懲役」が科されます。犯行を実行していなくても、「強盗の準備をしている」という意図が重く見られるのです。

次に事後強盗罪(刑法第238条)は、すでに窃盗をした後、逮捕を免れたり、盗品を取り返されるのを防ぐために暴行・脅迫を行った場合に成立します。この場合、強盗罪と同じ刑が科されます。

また、昏睡強盗罪(刑法第239条)は、薬物などで被害者を眠らせ、意識を失わせた上で財物を奪う行為を指します。暴力や脅迫を直接用いていなくても、「反抗を不能にした状態」で奪っているため、やはり強盗と同様に扱われます。

これらの罪はいずれも、社会的に非常に悪質と評価されるため、判決でも厳罰化が進んでいます。

2025年6月施行の刑法改正(拘禁刑への変更)

2025年6月から施行予定の刑法改正では、「懲役刑」と「禁錮刑」が廃止され、「拘禁刑」という新しい制度が導入されます。これにより、強盗罪で科される刑罰の運用にも変化が生じます。

拘禁刑では、従来の懲役のように労働を義務付けるのではなく、教育・職業訓練・社会復帰プログラムを含めた矯正処遇が可能になります。刑務所生活の中で更生を促すという観点が強化されるのです。

ただし、刑の重さ自体(強盗罪が5年以上の有期拘禁刑である点)は変わりません。むしろ、社会復帰を見据えた制度設計により、再犯防止の観点からより実効的な矯正が行われることが期待されています。

この改正により、今後は強盗事件でも「単に罰する」だけでなく、「社会に戻すためにどう矯正するか」という点に焦点が当てられていくでしょう。

強盗致傷罪・強盗致死罪などの重いケース

強盗の過程で被害者が怪我を負ったり、死亡してしまった場合には、さらに重い犯罪として処罰されます。ここでは、「強盗致傷罪」「強盗致死罪」「強盗殺人罪」の違いと、それぞれの刑罰の重さを解説します。

致傷・死亡を伴った場合の法定刑(無期懲役・死刑など)

刑法第240条には、「強盗が人を負傷させたときは無期または6年以上の懲役、人を死亡させたときは死刑または無期懲役」と規定されています。

つまり、被害者に怪我を負わせた時点で、通常の強盗罪よりも格段に重い刑罰が科されます。死亡に至った場合は、死刑も視野に入る非常に重大な犯罪です。

このような事件は裁判員裁判の対象となり、国民が量刑判断に参加します。被害者遺族の心情や社会的影響も考慮されるため、実刑判決の多くが「無期懲役」や「死刑」に至るケースも少なくありません。

このように、強盗致死・致傷は、単なる財産犯ではなく生命侵害を伴う重大犯罪として位置づけられています。

故意の有無で区別される「強盗殺人罪」との違い

強盗の過程で人を殺した場合、「強盗致死罪」と「強盗殺人罪」のどちらが適用されるのかは、行為者に殺意があったかどうかによって変わります。

たとえば、金を奪うために故意に被害者を殺した場合は「強盗殺人罪」(刑法第240条後段)が成立します。これに対して、奪取の際に誤って殺してしまった場合は「強盗致死罪」となります。

どちらも非常に重い犯罪で、刑罰は死刑または無期懲役が基本です。ただし、殺意の有無によって、判決の重さや社会的評価が異なります。

裁判では、凶器の使用方法、攻撃の部位、発言内容などから「殺意の有無」が慎重に判断されます。

実務上の量刑例・裁判員裁判対象事件

実際の裁判例をみると、強盗致傷事件では「懲役10年以上」、強盗致死事件では「無期懲役」が科されるケースが多い傾向にあります。

また、犯行の動機や計画性、被害者の数、示談の有無なども量刑に大きく影響します。被害者が死亡している場合は、たとえ反省が深くても無期懲役を免れるのは極めて困難です。

このような事件は必ず裁判員裁判の対象となり、一般市民も判決の判断に関わります。そのため、社会的な非難の強さや再犯防止の必要性がより重視される傾向にあります。

また、弁護人は被告の反省や更生意欲を丁寧に主張し、量刑を少しでも軽減するために努力しますが、被害者が死亡している場合には厳しい判決を避けることは難しいでしょう。

被害者が死亡・重傷を負った場合の弁護戦略

被害者に重い傷害や死亡結果が生じた場合、弁護人はまず「殺意の有無」を中心に主張を展開します。殺意がなければ、「強盗殺人」ではなく「強盗致死」にとどまる可能性があります。

また、示談の成立や被害者遺族への誠実な謝罪も量刑を左右します。裁判所は、真摯な反省態度や更生の意思を持つかどうかを重視する傾向にあります。

さらに、犯行時に薬物や精神疾患の影響があった場合には、責任能力の有無が争点となることもあります。責任能力が限定的であれば、刑が軽減されることもあり得ます。

ただし、いずれにしても被害者の命を奪った行為である以上、執行猶予がつくことはなく、非常に重い刑罰が科されるのが実情です。

まとめ|強盗で逮捕される罪・強盗罪の構成要件・法定刑を正しく理解しよう

ここまで見てきたように、強盗罪は「暴行・脅迫を用いて財物を奪う」極めて重大な犯罪です。単なる窃盗や恐喝とは異なり、被害者の身体や生命を脅かす行為を伴うため、法定刑も厳しく設定されています。

強盗罪の構成要件は、①暴行・脅迫という実行行為、②財物の奪取、③因果関係・故意・不法領得の意思の3要素で成り立ちます。いずれかが欠けると成立しませんが、実際の判断は状況次第で微妙に分かれます。

また、暴行や脅迫の程度によっては「恐喝罪」「窃盗罪」と判断される場合もあります。反対に、軽微なひったくりでも被害者が転倒するなどの結果があれば「強盗」とされることもあります。

2025年の刑法改正により、「拘禁刑」が導入されるなど、刑罰のあり方にも変化が見られます。しかし、強盗罪そのものの重さが変わるわけではなく、今後も厳罰が続く見通しです。

社会的信用を失うだけでなく、被害者やその家族に計り知れない苦痛を与える強盗行為。もし周囲でそのような事件に関わる兆候があれば、早めに弁護士など専門家に相談することが何より大切ではないでしょうか。

法律を正しく理解することが、自分と大切な人を守る第一歩です。