日常の中の「もしも」に備える法律ノート

DVで逮捕される行為と罪名・法定刑を徹底解説

近年、家庭内におけるDV(ドメスティック・バイオレンス)が社会問題として大きく取り上げられています。配偶者や恋人に対する暴力脅迫行為は、単なる家庭内のトラブルではなく、重大な犯罪として扱われるケースも増えています。

実際に逮捕につながる行為はどのようなものなのか、また逮捕後に問われる罪名法定刑についても正しく理解しておく必要があるでしょう。この記事では、DVで逮捕される行為の具体例や、逮捕から裁判に至る流れ、そして弁護士の役割について詳しく解説します。

「知らなかった」では済まされないのがDVの問題です。大切な家族や自分の生活を守るためにも、ぜひ最後までお読みください。

DVで逮捕されるのはどんな行為?

DVが逮捕につながるのは、単なる口論や夫婦げんかではなく、法律で犯罪として定められた行為に及んだ場合です。

相手を殴る・蹴るなど身体への暴行

もっとも典型的なDVは、殴る・蹴るなどの身体的な暴力です。これらは「暴行罪」「傷害罪」に該当する可能性があります。

たとえ軽く叩いたつもりでも、被害者が警察に通報すれば逮捕につながることもあります。暴力の度合いや怪我の有無は、罪の重さに影響します。

「家庭内だから大丈夫」と考えるのは大きな誤解です。家庭内暴力も外での暴力と同様に処罰対象となります。

配偶者や恋人だけでなく、同居家族に対する暴力もDVとして扱われる点に注意しましょう。

物を投げたり包丁などを突きつけるなどの暴力

直接殴る・蹴る行為だけでなく、物を投げつける、包丁を突きつけるなどの行為も逮捕対象となります。

怪我を負わせなくても、生命や身体への危険を与える行為「脅迫罪」「暴行罪」となる可能性が高いです。

特に刃物を突きつける行為は、被害者に強い恐怖心を与えるため、重く処罰されるケースが多いです。

「脅しただけで手は出していない」場合でも犯罪になる点は理解しておく必要があるでしょう。

髪の毛を切る・塩を振りかけるなど相手への攻撃的行為

髪の毛を無理やり切る食べ物や塩を振りかけるといった行為も、DVの一種として逮捕されることがあります。

これらは一見すると軽い嫌がらせのように思えますが、身体への直接的な攻撃であり「暴行」とみなされる可能性が高いです。

また、外見を大きく変える行為は人格を傷つける行為とされ、精神的被害も大きいと評価されます。

「暴力ではないから大丈夫」と思っても、立派な犯罪になることを忘れてはいけません。

言葉や行動で精神的な苦痛を与えるモラハラ的行為

DVは身体的な暴力だけではありません。言葉や態度で相手を追い詰め、精神的苦痛を与える「モラルハラスメント」も問題となります。

具体的には「お前なんか生きている価値がない」といった暴言や、長時間の無視、生活を監視する行為などです。

こうした行為は「脅迫罪」「侮辱罪」に発展することがあり、逮捕事例も存在します。

精神的な暴力も立派なDVであり、警察が介入する対象になり得る点を理解しておきましょう。

DVで逮捕されるまでの流れとは?

DV事件が発生した場合、逮捕までには一定の流れがあります。ここでは通報から勾留までのプロセスを整理してみましょう。

通報・警察が「逮捕の必要性」ありと判断

DV被害者や近隣住民から通報があると、警察が現場に駆けつけます。そこで事実確認を行い、暴力や脅迫が確認されれば逮捕の可能性が出てきます。

警察は被害者の安全確保を最優先に判断します。そのため、軽微な暴力でも再発の危険性があるとみなされれば、逮捕に踏み切ることがあります。

また、現場の状況証拠や被害者の供述が重要な判断材料となります。

「その場の勢い」でも、通報されれば即逮捕の可能性がある点に注意しましょう。

暴行罪や傷害罪など具体的な犯罪として捜査開始

逮捕が行われた場合、警察は暴行罪や傷害罪など具体的な犯罪として捜査を開始します。

証拠としては、被害者の診断書、現場の写真、音声記録などが収集されます。

被害者の供述と客観的な証拠が一致すれば、起訴される可能性が高まります。

「家庭内のことだから証拠がない」と思っても、実際には診断書や通話記録が大きな証拠となることは少なくありません。

逮捕後48時間以内に検察送致、その後勾留請求

逮捕された後、警察は48時間以内に検察庁へ事件を送致しなければなりません。

検察官は、証拠や被害の状況を見て勾留請求を行うか判断します。勾留が認められれば、最長20日間身柄が拘束されることになります。

この期間中に取り調べが行われ、起訴するかどうかが決定されます。

逮捕=すぐに裁判ではなく、まずは検察・裁判所の判断を経ることを理解しておくと良いでしょう。

DVで逮捕されたときに問われる罪名とは?

DVで逮捕された場合、行為の内容に応じて複数の罪名が適用されることがあります。ここでは代表的な罪名について解説します。

暴行罪

殴る、蹴るなど相手の身体に直接的な危害を加える行為は「暴行罪」に該当します。

実際に怪我をさせていなくても、暴力をふるっただけで成立する可能性が高いです。

暴行罪は比較的軽い犯罪と思われがちですが、逮捕・勾留につながることもあります。

「軽く叩いただけ」でも暴行罪として処罰される場合があるため注意が必要です。

傷害罪

暴力行為によって怪我を負わせた場合は「傷害罪」に問われます。

診断書が提出されると傷害罪が成立しやすくなります。打撲や擦り傷でも「傷害」と認められることがあります。

暴行罪よりも罪が重く、長期の懲役刑に発展する可能性もあります。

実際の怪我の程度よりも「治療の必要性」が重視される傾向があります。

脅迫罪

「殺すぞ」「二度と外に出られなくしてやる」などの発言は、脅迫罪にあたります。

実際に暴力を加えなくても、生命や身体に対する危害をほのめかすだけで犯罪となります。

また、電話やSNSを通じた脅迫も同様に処罰対象となります。

被害者が強い恐怖を感じた時点で犯罪が成立する点が特徴です。

不同意性交等罪(配偶者間でも適用)

配偶者や恋人であっても、相手の同意がない性行為を強要すれば「不同意性交等罪」に問われます。

これは強制性交等罪から名称変更された罪であり、被害者の同意がない場合には厳しく処罰されます。

結婚しているからといって同意を得ずに性行為を行えば犯罪となることは、広く理解されていないかもしれません。

配偶者間であっても性的自由は尊重されるべきであることを忘れてはなりません。

器物損壊罪

相手のスマートフォンを壊したり、家具を壊したりする行為は「器物損壊罪」となります。

直接的に身体を傷つけていなくても、財産を壊す行為は立派な犯罪です。

DVの現場では、感情のままに物を壊すケースが少なくありません。

「人を傷つけていないから問題ない」と思うのは危険です。

保護命令違反(DV防止法)

被害者が裁判所に申し立てて「保護命令」が出された場合、加害者は一定期間接触や接近禁止されます。

これに違反して接触した場合、「保護命令違反」として刑事罰が科されます。

命令が出ているにもかかわらず無視する行為は、極めて重く評価される傾向があります。

命令違反は逮捕の可能性が高く、再犯とみなされるため量刑が重くなるケースもあります。

DVで逮捕された場合の法定刑をわかりやすく解説

DVに関連する罪には、それぞれ法定刑が定められています。ここでは主な罪ごとの刑罰を紹介します。

暴行罪:2年以下の懲役または30万円以下の罰金など

暴行罪の刑罰は比較的軽いものですが、繰り返し行われた場合や悪質な場合には厳罰化されます。

初犯であれば略式罰金で済むこともありますが、逮捕や勾留による社会的影響は避けられません。

被害者との関係修復が難しい場合、刑事処分が重くなる傾向があります。

暴行罪は軽視されがちですが、十分に人生を狂わせる可能性を持っています。

傷害罪:15年以下の懲役または50万円以下の罰金

傷害罪は暴行罪よりも重く、長期の懲役刑が科されることもあります。

治療が長期に及ぶ場合後遺症が残る場合は、さらに厳しい処分が下されることもあります。

実刑判決が出ると社会復帰が困難になることも少なくありません。

傷害罪はDV事件の中でも最も重く扱われる罪のひとつです。

脅迫罪:2年以下の懲役または30万円以下の罰金

脅迫罪は実際に暴力を振るわなくても成立するため、逮捕されやすい罪のひとつです。

刑罰自体は比較的軽めですが、繰り返し行った場合被害者の恐怖心が強い場合は厳しい判決が出ることもあります。

また、暴行や傷害と併せて起訴されることも多いため、複数の罪が重なり刑が重くなることもあります。

「言葉だけでも犯罪になる」という意識を持つことが大切です。

不同意性交等罪:5年以上の有期懲役

この罪は非常に重く、最低でも5年以上の懲役刑が科されます。

相手の同意がない性行為は配偶者間でも犯罪となり、強い処罰対象です。

無理やりの行為はもちろん、威圧的な態度で同意を得た場合も「不同意」とされる可能性があります。

人生を大きく左右する極めて重い犯罪であることを理解しなければなりません。

異なる不同意わいせつ罪:6月以上10年以下の拘禁

相手の同意なく性的な行為をした場合、「不同意わいせつ罪」となります。

こちらも配偶者や恋人であっても成立します。性的自由を侵害する重大な犯罪です。

刑罰は懲役刑が中心で、場合によっては長期間の収監となる可能性もあります。

性的行為において「相手の意思を尊重する」ことが極めて重要です。

器物損壊罪:3年以下の懲役または30万円以下の罰金など

器物損壊罪財産への被害を対象とした罪です。

比較的軽い刑罰ですが、DV事件として逮捕・勾留につながるケースもあります。

また、被害額が大きい場合や繰り返しの場合は処罰が重くなります。

物を壊すことも立派なDVであり、犯罪行為であることを忘れてはいけません。

保護命令違反:2年以下の懲役または200万円以下の罰金

裁判所の命令を無視して被害者に接触する行為は、極めて重く扱われます。

再犯リスクが高いと判断されるため、実刑判決につながることもあります。

保護命令違反は「社会全体に対する挑戦」と評価される場合もあり、量刑が重くなりがちです。

保護命令を軽視することは、自ら刑を重くする行為に他なりません。

DVで逮捕される行為の具体例を紹介

ここでは、実際に逮捕につながることがあるDVの行為を、具体例として紹介します。これらは「冗談」や「しつけ」と誤解されやすいですが、法律上は立派な犯罪行為です。

殴打や蹴りなどの直接的な暴力

拳で殴る、足で蹴るといった行為は最も典型的なDVであり、逮捕のリスクが非常に高いです。

被害者が診断書を取得すれば、ほぼ確実に「傷害罪」として立件されます。

また、子どもが見ている前での暴力は「児童虐待」として別途扱われる場合もあります。

一度の暴力でも逮捕に至る可能性があることを認識すべきです。

物を投げて怪我をさせる行為

コップやリモコンを投げつけて怪我を負わせた場合、「傷害罪」となる可能性があります。

怪我をしなかったとしても、「暴行罪」として逮捕されるケースがあります。

また、家具や電化製品を壊した場合は「器物損壊罪」が追加されることもあります。

怒りに任せて物を投げる行為は、逮捕の引き金になりかねません。

包丁突きつけや髪を切る行為

包丁やハサミを相手に突きつける行為は、たとえ怪我をさせていなくても「脅迫罪」となります。

また、無理やり髪の毛を切る行為は、相手の人格権を侵害する行為として「暴行罪」に問われる可能性があります。

これらは被害者の精神的苦痛も大きいため、実刑判決につながることもあります。

「脅しただけ」で済まされる行為ではないことを忘れてはいけません。

「殺すぞ」などの脅迫的言動

言葉による脅しも、DVとして逮捕される行為のひとつです。

たとえ実際に危害を加えるつもりがなくても、被害者が恐怖を感じれば「脅迫罪」が成立します。

電話やメール、SNSでの脅しの言葉も処罰対象です。

「言葉だけだから大丈夫」という考えは非常に危険です。

保護命令があるのに近づくなど違反行為

裁判所から出された保護命令に違反して被害者に近づく行為は、即座に逮捕につながります。

命令違反再犯の危険が極めて高いと判断されるため、厳しく処罰される傾向があります。

謝罪や和解を目的として接触した場合でも、法律的には「違反」とみなされます。

保護命令を無視すれば、さらに重い刑罰を招くことになるでしょう。

DVで逮捕されないために知っておきたいポイント

DVを未然に防ぐためには、どのような行為が犯罪となるのかを正しく理解し、日常生活で注意することが大切です。

暴力や脅迫的言動は許されないという基本理解

DVを防ぐ第一歩は「家庭内でも暴力や脅迫は犯罪である」という意識を持つことです。

一時的な怒りに任せて暴力を振るうことは、自らの人生を大きく狂わせる結果になります。

家庭内だからといって特別に許されることはありません。

「暴力は絶対に許されない」という認識を徹底する必要があります。

相手の「嫌だ」に反する性行為は犯罪になる

配偶者や恋人であっても、相手の同意がなければ性行為は犯罪です。

拒否の意思を示しているのに無理やり行為に及ぶと、「不同意性交等罪」として逮捕される可能性があります。

また、拒否できない雰囲気を作って行う行為も同罪に問われる場合があります。

相手の意思を尊重することが、犯罪を避ける最も重要なポイントです。

保護命令を無視しないことが重要

裁判所の保護命令違反すれば、必ず逮捕されます。

被害者との接触を望んでも、法律を無視することは逆効果です。

むしろ弁護士を通じて法的に正しい対応をすることが求められます。

「直接会って謝りたい」という気持ちがあっても、命令に従うことが最優先です。

言葉の暴力も侮辱罪などになり得る点に注意

大声での罵倒や、人格を否定するような言葉DVとみなされる可能性があります。

相手を精神的に追い詰める発言は、場合によっては「侮辱罪」「脅迫罪」として逮捕されることがあります。

日常的な暴言は、被害者が録音して警察に提出することも珍しくありません。

「言葉だから大丈夫」と考えるのは非常に危険です。

DVで逮捕された後の家族への影響とは?

DVによって逮捕されると、本人だけでなく家族にも大きな影響が及びます。その影響は精神面・経済面の両方に広がります。

加害者本人の逮捕・勾留による家庭崩壊の危険

加害者が逮捕・勾留されると、家庭は経済的にも精神的にも大きなダメージを受けます。

家計を支えている人物が拘束されると、生活が立ち行かなくなる可能性もあります。

また、家庭内の信頼関係は壊れ、夫婦関係や親子関係が修復不可能になることもあります。

一度の暴力が家庭崩壊を招くリスクを持っていると理解すべきです。

被害者や子どもへの精神的・経済的負担の拡大

DVの被害者子どもは、精神的なショックを強く受けます。

「また暴力が起こるのではないか」という恐怖心が消えず、日常生活にも支障が出ることが多いです。

さらに、加害者の収入が途絶えることで経済的な負担も重くなります。

DVは加害者だけでなく、家族全体を苦しめる問題であると言えるでしょう。

前科による社会的・職業的な不利益

DVで有罪判決を受けると、前科がつきます。前科があると就職や転職に不利になる可能性が高いです。

また、会社に逮捕や起訴が知られると、解雇や降格といった処分を受けるケースもあります。

社会的な信用を失うと、生活再建は困難になります。

DVは「一時の過ち」で済まされず、長期的な社会的不利益をもたらします。

DVで逮捕されたときの弁護士の役割と相談の重要性

DVで逮捕された場合、弁護士に相談することは極めて重要です。弁護士は単なる法律の専門家ではなく、加害者本人や家族を支える存在として重要な役割を果たします。

今後の身柄対応や釈放へ働きかける

逮捕後は48時間以内に検察に送致され、その後勾留されるかどうかが決まります。ここで弁護士が早期に動けば、身柄解放の可能性を高められることがあります。

弁護士は裁判所に対して勾留請求をしないよう働きかけたり、勾留を回避するための条件を提示したりすることができます。

また、被害者との示談を進めることによって、釈放に結びつけるケースも少なくありません。

弁護士の迅速な介入が、その後の自由と人生を左右することは間違いありません。

罪名と量刑の軽減を目指した法的弁護活動

DVで逮捕された場合、罪名や刑罰の重さは行為の内容被害者の状況によって変わります。

弁護士は、暴行罪や脅迫罪など比較的軽い罪名での処理を目指したり、執行猶予を獲得したりする活動を行います。

証拠や状況を精査することで、より有利な立場で裁判を進められる可能性があります。

刑罰を軽減できるかどうかは、弁護士の働きかけに大きく左右されるのです。

保護命令の取得支援や手続きアドバイス

DV事件では、被害者を守るために裁判所から「保護命令」が出されることがあります。

弁護士は加害者だけでなく、被害者側からの依頼にも応じ、保護命令の取得手続き法的アドバイスを行います。

これにより、被害者は安心して生活できるようになり、再発防止につながります。

弁護士は加害者・被害者双方にとって重要な支援者であると言えるでしょう。

被害者との関係修復・調整支援も含めた支援

DV事件が発生すると、夫婦や恋人関係が完全に壊れてしまうことも多いですが、修復を希望するケースも存在します。

弁護士は被害者との示談交渉謝罪の場を法的に安全な形で調整し、円満な解決に導く役割も担います。

また、子どもの養育や財産分与といった家庭問題についても、弁護士が間に入ることで冷静に解決できる可能性が高まります。

弁護士は「法的な代理人」であると同時に「関係修復の調整役」としても重要な役割を果たしています。

まとめ|DVで逮捕される行為・罪名・法定刑を正しく理解しよう

DVは単なる家庭内のトラブルではなく、立派な犯罪として処罰されます。殴る、蹴るといった身体的暴力だけでなく、脅迫や精神的な圧力、さらには財産の破壊行為も逮捕につながります。

また、配偶者間であっても不同意の性行為は重罪として厳しく処罰される点は、特に注意が必要です。

逮捕されれば本人の人生だけでなく、家族にも深刻な影響が及びます。精神的負担や経済的困難、さらには社会的信用の喪失など、取り返しのつかない結果を招く可能性があります。

もしDVで逮捕された場合は、速やかに弁護士に相談することが最善の対応となります。適切な法的サポートを受けることで、身柄の解放や刑罰の軽減、さらには被害者との示談に向けた交渉が可能になります。

DVは「知らなかった」では済まされません。法律で禁じられている行為を正しく理解し、暴力を未然に防ぐことが何よりも大切です。

家庭を守り、自分自身の未来を守るために、今一度DVについての知識を深め、日常の言動を見直していくことが求められるのではないでしょうか。