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窃盗は初犯でも逮捕される?流れ・裁判・処分・不起訴の可能性まで徹底解説

「初めての窃盗だから逮捕まではされないだろう」と考えている方もいるかもしれません。しかし、窃盗はれっきとした犯罪であり、たとえ初犯であっても状況次第で逮捕される可能性があります。この記事では、窃盗の初犯で逮捕される場合の流れから、裁判や処分、不起訴の可能性までをわかりやすく解説していきます。

初めてのことで不安な方、家族や知人が関与してしまった方など、多くの方にとって有益な情報になるはずです。万が一のときの対処法や弁護士に相談するメリットについても紹介しているので、ぜひ最後までお読みください。

窃盗は初犯でも逮捕される可能性があるのか?

窃盗は刑法第235条により処罰対象となっており、初犯かどうかに関わらず、状況によっては逮捕されることがあります。この章では、逮捕の可能性があるかどうかについて、3つの視点から解説します。

被害額が少なければ逮捕されないこともある

窃盗の被害額ごく少額で、かつ犯行に悪質性がない場合には、現行犯でなければ逮捕されないケースもあります。たとえば、スーパーマーケットでお菓子一つを万引きした程度であれば、店側が警察への通報を控えることもあります。

また、警察に通報されたとしても、被害者との示談が成立し、被害が弁済された場合には、逮捕されずに在宅捜査となることもあります。

とはいえ、「少額だから大丈夫」という油断は危険です。警察の判断や被害者の感情によっては、厳しく対応されることもあります。

初犯であっても、行為自体は明確な犯罪であることを自覚しておくべきです。

犯行の悪質性が高ければ逮捕される

犯行の態様が悪質であれば、被害額に関係なく逮捕される可能性が高まります。たとえば、計画的な万引き、店舗を複数回にわたって狙うような行為、防犯カメラを避けての行動などが挙げられます。

さらに、窃盗の際に他人を押しのけたり暴言を吐いたりすれば、暴行や脅迫を伴った窃盗=強盗罪に問われるおそれも出てきます。

悪質性が高いと警察や検察は社会的な影響も考慮して厳しく対応する傾向にあるため、初犯でも容赦はされません。

結果として、現行犯逮捕または後日逮捕という流れになることも十分にありえます。

初犯でも常習性があるように見えると逮捕される

過去に逮捕歴や前科がなくても、捜査の中で「常習性がある」と判断されれば逮捕の可能性が高まりますたとえば、複数回同様の手口で万引きをしていたことが発覚した場合、たとえ今回が初めての摘発であっても、「常習犯」として扱われることがあります。

また、証拠品が多数見つかった場合や、複数の防犯カメラ映像で繰り返しの犯行が確認された場合なども同様です。

常習性が認定されると、検察としても再犯のリスクが高いと見なすため、厳格な処分が選ばれる傾向があります。

結果的に、初犯であっても身柄拘束(逮捕・勾留)となるケースが多くなるのです。

窃盗の初犯で逮捕されたときの警察での流れとは?

逮捕されたあとの流れは、法律で明確に決まっています。この章では、逮捕後に警察や検察がどのような手続きを進めるのか、その一連の流れを具体的に紹介します。

逮捕→48時間以内に検察へ送られる

窃盗現行犯後日逮捕された場合、まずは警察署連行されて取り調べを受けます。この段階では、捜査官から犯行の動機、手口、反省の有無などを詳しく聞かれます。

警察は逮捕から48時間以内に被疑者を検察に送致する義務がありますこの期間に必要な証拠の確保や供述の記録が行われます。

また、本人が黙秘権を行使した場合でも、それが不利になることはありません。とはいえ、捜査側はその分他の証拠で立件を進めることになるため、注意が必要です。

送致された後は、検察官が24時間以内に勾留請求するかを判断します。

勾留されれば最大20日身柄拘束される

検察官が「逃亡や証拠隠滅の恐れがある」と判断した場合、裁判所に勾留を請求します。裁判所が勾留を認めれば、まず10日間の勾留が決定され、その後さらに10日間の延長が可能です。

つまり、最大で20日間にわたって身柄を拘束される可能性があるということです

この間に、さらに詳しい取り調べが行われ、証拠や証言が集められていきます。なお、勾留中は弁護士以外の面会が制限される場合もあるため、家族との連絡が困難になることがあります。

この段階での対応次第で、起訴されるか不起訴になるかが大きく左右されます。

在宅捜査なら自宅で調べられ、後日判断される

被害額が少ない犯行が軽微である、あるいは身元が明確で逃亡の恐れがないと判断された場合、逮捕されずに「在宅捜査」となることもあります。

在宅捜査では、警察署への出頭や任意の聴取が行われ、自宅にいながら取り調べが進みます。

逮捕されないため精神的な負担は軽減されますが、捜査が続いていることには変わりありません

この在宅捜査の後、検察官が起訴・不起訴の判断を行い、場合によっては略式起訴や正式な裁判となることもあります。

窃盗の初犯で逮捕された後に起こる裁判の流れ

窃盗で起訴されると、裁判所での審理が始まります。ただし、全てが法廷での裁判になるわけではありません。この章では、裁判に至った場合の3つのパターンについて解説します。

不起訴処分なら裁判は開かれず終了する

検察官が「処罰の必要性がない」と判断すれば、不起訴処分となります。不起訴には「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」などの種類があります。

特に初犯で被害額が少なく、反省や示談が成立している場合には、起訴猶予処分が下される可能性が高くなります

不起訴処分となれば、正式な裁判は開かれず、その時点で事件は終了します。

ただし、微罪処分などの場合、記録が警察に残ることがあるため、次回の同様行為には注意が必要です。

略式起訴なら裁判所で罰金だけで終わる

証拠が十分にあり、本人も罪を認めている場合には、略式起訴が行われることがあります。略式起訴とは、裁判官による書面審理だけで罰金刑を決定する手続きです。

この場合、正式な公判は行われず、比較的軽い処分で事件が終結します

罰金額は数万円から数十万円まで幅がありますが、前科がつくため注意が必要です。

略式起訴は時間もコストも抑えられるため、検察と被疑者の双方にとって現実的な選択肢となっています。

通常公判になれば法廷で懲役や判決が下る

反省の色が見られない、示談が不成立、常習性が認められるなど、悪質性が高いと判断された場合は、通常公判となります。

この場合、公開の法廷で証拠調べや証人尋問が行われ、判決が下されます。

懲役刑や執行猶予付き判決、あるいは実刑判決が出る可能性も否定できません

裁判は原則として公開されるため、社会的な影響も大きくなり、被告人の生活にも大きな変化をもたらします。

窃盗の初犯で逮捕された場合の処分の種類と内容

窃盗事件で逮捕された後は、裁判の有無にかかわらず、何らかの処分が下されます。ここでは主な処分の種類とその内容について、詳しく説明していきます。

微罪処分なら前科はつかず記録だけ残る

微罪処分とは、事件の悪質性が低く、犯人が反省している場合などに警察の判断で事件を検察に送致せずに終わらせる手続きです。

この処分が下されれば、前科はつかず、刑罰も科されませんただし、警察内部の記録として残るため、将来再び似た事件を起こした際には影響を与える可能性があります。

初犯で金額も少額、さらに被害者と示談が成立しているなど、事情が良い場合にはこの処分になることがあります。

ただし、微罪処分が適用されるかどうかは、地域や警察署の対応にも差があるため、確実ではありません。

不起訴(起訴猶予)なら前科も刑罰もつかない

検察が起訴猶予の判断を下すと、不起訴処分となり裁判にはなりません。この場合も刑罰はなく、法的には前科もつきません

起訴猶予とは「犯罪は成立するが、諸事情により今回は起訴しない」という判断です。たとえば、反省の意思が明確に見える、示談が成立している、社会的制裁を受けているなどが理由として挙げられます。

不起訴処分は今後の生活に大きな影響を及ぼさない処分であるため、できる限りこの形で終わらせることが望ましいでしょう。

そのためにも、早い段階から弁護士に相談して、示談や謝罪の対応を進めることが重要です

起訴されたら罰金か懲役、実刑となる可能性がある

検察が起訴を決定した場合、略式起訴や通常公判により裁判が行われます。略式起訴の場合は罰金で済むこともありますが、悪質性が高いと判断されれば懲役刑や実刑もあり得ます

特に、窃盗を繰り返していた、共犯者がいた、暴力的な手段を使っていたなどの事情があると、量刑も重くなります。

初犯であっても刑務所に収容されるケースもあるため、処分を甘く見てはいけません。

刑が確定すれば前科がつき、社会復帰にも大きな影響が出ます。再就職やローン、住居などにも制限が出ることがあるため、早期に適切な対策を講じることが大切です。

窃盗の初犯で逮捕されたときの不起訴や前科の可能性は?

誰しも初めてのことで、将来に不安を感じるでしょう。ここでは、窃盗の初犯で不起訴になる可能性や、前科がつくケースについて見ていきましょう。

初犯で被害額が少なければ不起訴になりやすい

窃盗の初犯で、しかも被害額が1,000円未満などごくわずかな場合、起訴猶予や微罪処分になるケースが多く見られます。

検察も「刑罰による社会的コスト」と「処罰の必要性」を天秤にかけて判断するため、軽微な犯罪であれば不起訴にする傾向があります

また、身元が安定していて、反省の意思が見られるなどの事情も不起訴に有利に働きます。

とはいえ、それが確実というわけではないため、しっかりと準備と対応をしておくべきでしょう。

示談が成立すれば不起訴判断が高まる

被害者との間で示談が成立すると、被害回復が済んだと検察に判断されやすくなります。

示談書には、処罰を望まない意思や謝罪が記されるため、不起訴処分の決め手になることもあります

弁護士を通じて丁寧な交渉を行い、誠意ある謝罪と金銭的な補償を申し出ることで、相手側の心証も変わってきます。

示談が成立しないままだと、起訴や裁判に発展するリスクが高まります。

反省と再犯防止の姿勢を示すと有利

反省していることを態度や言葉で示すことは重要です。供述調書や調査書にもその姿勢が記されるため、検察官の判断材料になります。

再犯防止の具体的な行動(カウンセリングの受講、家族との生活改善、職業支援の利用など)も不起訴判断に好影響を与えます

また、日頃の生活態度や社会的な環境も判断材料となりますので、安定した職場や支援者がいることも重要なポイントです。

すべての行動が、今後の処分に直接関わるといっても過言ではありません。

窃盗の初犯で逮捕されないケースや不起訴になるケースとは?

窃盗をしてしまったとしても、すべてのケースで逮捕され起訴されるとは限りません。以下では、逮捕されないケースや不起訴となるケースについて具体的に紹介します。

自首・出頭すれば減軽される可能性がある

事件を起こしたあとに、自分の意思で警察に出頭した場合、「自首」として扱われることがあります。

自首は刑法上、量刑を軽減する事情として認められており、逮捕を避けられる可能性も高くなります

特にまだ事件が発覚していない段階での自首は評価されやすく、誠意ある対応とみなされるため、不起訴処分に近づくこともあります。

ただし、発覚後の出頭「自首」ではなく「任意出頭」として扱われるため、法的な評価はやや下がります。それでも、反省の姿勢として評価される余地は十分にあります。

示談成立で検察が起訴を見送ることがある

すでに述べたように、被害者との示談が成立していれば、検察が起訴を見送る(不起訴とする)判断を下すことが多くあります

示談は、加害者と被害者の間で損害の賠償や謝罪が成立していることを示すため、被害者の意向が非常に重視されるのです。

示談書「処罰を望まない」との記載がある場合には、検察の判断にも大きく影響を及ぼします。

加害者にとっては、不起訴を目指すうえで最も有効な方法のひとつといえるでしょう。

真摯に反省し再犯防止策を示せば不起訴になりやすい

事件後の行動も不起訴かどうかを決める重要な要素です。たとえば、職場復帰や家族との同居、生活環境の改善などが挙げられます。

加えて、反省文を提出したり、カウンセリングを受けるなど、再犯防止への努力が見られる場合、検察もそれを考慮に入れます

検察は「再犯のリスク」を非常に重視するため、そのリスクが低いと判断されれば、不起訴の可能性が高くなります。

弁護士と相談しながら、どのような行動を取るべきか早めに方針を決めておくと安心です。

窃盗の初犯で逮捕された場合に弁護士に相談するメリット

窃盗事件において、弁護士のサポートは非常に大きな力になります。この章では、弁護士に相談することで得られるメリットを3つ紹介します。

逮捕直後から接見できて不利な供述を防げる

弁護士は、逮捕された被疑者に対してすぐに接見し、現在の状況や権利についてアドバイスすることができます。

これにより、警察や検察の取り調べで不利な供述をしてしまうのを防ぐことができます

初めての逮捕で混乱している中、法律のプロである弁護士の助言は非常に心強いものです。

また、家族との連絡や今後の対応方針についても、その場でしっかりと話し合うことができます。

示談交渉を的確に進めて不起訴につなげやすい

被害者との示談交渉は、当事者ではなく弁護士が間に入ることでスムーズに進みます。

弁護士は法的な知識と交渉経験をもとに、被害者の心情に配慮しながら、示談の成立を目指します

さらに、示談書の作成や検察への提出もすべて代行してくれるため、安心して任せることができます。

示談が成立すれば、不起訴処分につながる可能性が格段に高まります。

裁判に進んでも減刑や執行猶予を引き出せる

万が一、起訴されて裁判になった場合でも、弁護士は被告人の立場で弁護活動を行います。

反省の姿勢や示談の成立、再犯防止策などを証拠として裁判所に提出し、減刑や執行猶予を求めることができます

また、裁判で不利な事実が誤って伝わらないように、証拠や証言を整理することも重要な役割です。

裁判は人生における重大な局面です。専門家である弁護士の支援を受けることで、最善の結果を目指すことができます。

まとめ:窃盗は初犯でも逮捕の可能性があり、裁判や処分にも注意が必要

窃盗はたとえ初犯であっても、逮捕や裁判、前科のリスクがついてまわります。被害額の多寡や示談の有無、反省の姿勢などが今後の処分に大きく影響します。

少しでも軽い処分で終わらせるためには、早期に弁護士に相談し、適切な対策を講じることが不可欠ですまた、反省の気持ちと再発防止の意思を具体的に示すことも大切です。

この記事を通じて、万が一のときにどのように対応すれば良いかが明確になったのではないでしょうか。冷静に状況を見極め、正しい行動を取りましょう。