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建造物侵入罪とは?成立要件から罰則・未遂・関連する罪まで徹底解説

建造物侵入罪は、刑法の中でも日常生活に身近な場所で成立する可能性のある犯罪のひとつです。例えば、夜間に学校へ忍び込んだり、店舗に無断で侵入したりする行為がこれにあたります。しかし、具体的にどのような場合に成立するのか、またどんな刑罰が科されるのかは意外と知られていません。

この記事では、建造物侵入罪の基本的な定義や成立要件、処罰の内容をわかりやすく解説します。さらに、未遂罪や不退去罪との違い、実際に問われやすい事例、逮捕後の流れについても整理します。法律の専門知識がなくても理解できるよう、具体例を交えながら解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

建造物侵入罪について知っておくことは、自分自身や周囲の人を守るためにも大切ではないでしょうか?

建造物侵入罪とはどんな罪なのか?基本をわかりやすく解説

まずは建造物侵入罪の基本的な内容を確認しておきましょう。この罪は刑法で明確に定められており、侵入する対象や類型も法律上区分されています。

刑法第130条で定められている罪である

建造物侵入罪は、日本の刑法第130条に定められている犯罪です。この条文は「正当な理由がなく、人の住居や建造物、艦船などに侵入した者は処罰される」と規定しています。

つまり、法律上の根拠が明確に存在しており、単なる不法行為ではなく刑罰法規に基づいた犯罪とされます。刑法に規定されているため、警察や裁判所が取り扱う重大な問題となるのです。

刑法第130条は、社会の秩序を守るために設けられた規定といえるでしょう。

この条文を正しく理解することが、建造物侵入罪の全体像をつかむ第一歩になります。

「正当な理由なしに侵入する」ことが要件

建造物侵入罪が成立するには、侵入する行為に「正当な理由」がないことが条件になります。正当な理由とは、たとえば住人に招かれた、勤務先の建物に入るといったケースです。

逆に、窃盗や盗撮など不法な目的で建物に入る場合は、当然正当な理由にはあたりません。この「理由の有無」が犯罪成立に大きく関わります。

つまり、目的や動機が重要な判断基準となるわけです。裁判においても、この点が争点になることが少なくありません。

単に建物に足を踏み入れたというだけではなく、その背景事情まで含めて判断される点に注意が必要です。

侵入する先の対象(住居・建造物・艦船など)が定められている

建造物侵入罪保護される対象は、住居や建造物、艦船などと明記されています。ここでいう「建造物」には、住宅だけでなく店舗、学校、倉庫なども含まれます。

また、艦船とは船舶を指し、無断で船に侵入した場合にもこの罪が成立します。社会生活における人々の「生活空間」を守るために、幅広い施設が対象になっているのです。

したがって「空き家」「閉鎖された店舗」などでも、管理や所有が認められていれば建造物侵入罪が成立することがあります。

このように、対象となる場所が多岐にわたるため、不用意に立ち入ることは非常にリスクが高いといえるでしょう。

「住居侵入罪」「邸宅侵入」「建造物侵入」「艦船侵入」の類型

刑法第130条には複数の侵入罪が含まれています。代表的なのが「住居侵入罪」「邸宅侵入罪」「建造物侵入罪」「艦船侵入罪」です。

住居侵入罪は、個人が生活している住まいへの侵入を対象にしています。邸宅侵入は、住居に準ずる建物や敷地への侵入です。建造物侵入は、学校や店舗など住居以外の建物を対象とします。そして艦船侵入は、船への不法侵入です。

それぞれの違いはありますが、共通するのは「正当な理由なく侵入することが禁止されている」点です。社会の秩序を守るための規定といえるでしょう。

類型を理解しておくと、実際の事件における罪名の違いも見分けやすくなります。

建造物侵入罪の成立要件とは?侵入とみなされる行為を具体例で紹介

次に、建造物侵入罪が成立するための要件について確認します。ここでは「正当な理由がないこと」「侵入先の範囲」「侵入の行為そのもの」などを詳しく見ていきましょう。

「正当な理由がないこと」とは何か ― 動機・目的の例(窃盗目的・盗撮目的など)

正当な理由がないとは、法律的に許される根拠が存在しないという意味です。例えば、窃盗目的で商店に入った場合や、盗撮目的でトイレに侵入した場合などは、明らかに不法な動機であり正当性はありません。

また、廃墟や空き家への探検目的の立ち入りも、管理者が存在する限り正当な理由にはならないことがあります。意図が「遊び」であっても罪に問われる可能性があるのです。

一方で、火事を消すために建物に入るような緊急避難のケースは、正当な理由があると判断される場合もあります。

動機や目的によって正当性が認められるかどうかが大きく変わるという点が重要です。

どのような建物等が「人の看守する建造物」にあたるか ― 管理・支配の有無の判断

建造物侵入罪対象となる建物は、人の管理や支配下にある必要があります。たとえば、放置されて完全に管理者がいない廃墟の場合は、建造物侵入罪が成立しないこともあります。

しかし、管理者が所有権を維持している空き家や倉庫などは、たとえ普段使われていなくても「看守されている建造物」とみなされます。

この判断基準は、実際の裁判例でもたびたび争われています。管理や支配の有無はケースごとに評価されるため、一概に言い切れないのが実情です。

つまり、「人が関与しているかどうか」が大きなポイントになるのです。

「侵入」の意味 ― 門を越える、鍵を開ける、立ち入り禁止表示を無視するなどのケース

「侵入」という言葉は、単に建物の中に深く入り込むことだけを指すわけではありません。法律上は、管理権の及ぶ範囲に無断で立ち入る行為全般が「侵入」とみなされます。

たとえば、門やフェンスを越える、閉ざされた扉の鍵を開けて入る、立ち入り禁止の看板を無視して敷地内に入るなどが典型的です。入口付近であっても、管理権を侵害すれば「侵入」と認定される可能性があります。

実際には、足を一歩踏み入れた時点で侵入が成立することもあるため、思った以上に範囲が広いのが特徴です。

このように、侵入行為のハードルは低く設定されているため、不注意であっても犯罪に該当してしまうケースがあるのです。

囲繞地や塀・柵を乗り越えるなど外周からの侵入も含まれる例

建造物侵入罪では、建物の中に入らなくても罪が成立することがあります。具体的には、建物を取り囲む塀や柵を乗り越えて敷地内に入った場合も「侵入」とされます。

たとえば、学校の校庭に夜間無断で入る行為や、マンションの敷地に許可なく立ち入る行為などがこれにあたります。つまり、必ずしも室内に入る必要はないのです。

この考え方は、住人や管理者の生活空間を守るために重要です。敷地全体が私的な支配下にある以上、その外周を越えた時点で侵害とみなされます。

したがって「ちょっと入っただけ」という言い訳は通用しないことを理解しておく必要があるでしょう。

建造物侵入罪の法定刑とは?前科や罰金・懲役について知っておこう

ここでは、建造物侵入罪が成立した場合に科される刑罰について解説します。刑法で定められた法定刑の内容や、実際の量刑の判断基準、前科への影響などを整理します。

法定刑の内容 ― 「3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金」

建造物侵入罪の法定刑は、「3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金」と定められています。これは比較的軽い刑罰に分類されますが、実際に科される刑は行為の悪質性や動機によって変わります。

例えば、軽い悪戯で侵入した場合には罰金刑にとどまることが多いですが、窃盗目的など重大な動機がある場合は懲役刑に至ることもあります。

つまり、法定刑の幅が広いため、同じ建造物侵入罪でも処分は大きく異なるのです。

また、罰金刑であっても前科として記録が残る点には注意が必要です。

「拘禁刑」と「懲役・禁錮」の違いと最近の改正について

2022年の刑法改正により、「懲役刑」と「禁錮刑」が廃止され、新たに「拘禁刑」という刑罰が導入されました。これにより、従来は懲役と禁錮に分かれていた刑罰が一本化されています。

拘禁刑では、施設内での作業を命じられる場合もあれば、作業を行わない場合もあり、より柔軟な運用が可能となりました。これは刑務所での処遇改善を目的とした改革です。

建造物侵入罪においても、この改正後は拘禁刑が科される可能性があります。したがって、最新の法律の枠組みを理解しておくことが大切です。

「拘禁刑」=懲役と禁錮の統合刑と覚えておくとわかりやすいでしょう。

前科になるかどうか ― 起訴・有罪判決の要件と記録の影響

建造物侵入罪で逮捕されたとしても、必ず前科がつくわけではありません。前科となるのは「起訴され、有罪判決を受けた場合」です。つまり、不起訴処分や無罪判決であれば前科はつきません。

ただし、逮捕や勾留の事実自体は「前歴」として警察に記録が残ります。前歴と前科は異なりますが、どちらも将来の判断に影響を与えることがあります。

例えば、同じような犯罪を繰り返した場合、過去の前歴や前科が考慮されて処罰が重くなる可能性があります。

したがって、「軽い罪だから大丈夫」と考えるのは危険ではないでしょうか。

罰金になるケース/懲役になるケースの判断基準

建造物侵入罪で罰金刑にとどまるか、懲役刑に至るかは行為の内容や被害の程度によって大きく変わります。単純に「入ってしまっただけ」であれば罰金刑となるケースが多いです。

しかし、窃盗や盗撮など別の犯罪を行う目的で侵入した場合は、より重い処罰が科される傾向があります。また、住居への侵入は被害者への影響が大きいため、厳しく扱われやすいです。

さらに、初犯かどうかも量刑に影響します。初犯で反省が見られる場合は罰金刑や執行猶予がつくこともありますが、再犯の場合は懲役刑に直結することもあります。

つまり、「動機」「侵入対象」「前科の有無」が量刑の大きなポイントになるといえるでしょう。

建造物侵入罪の未遂は処罰されるのか?未遂罪の考え方をやさしく解説

続いて、建造物侵入罪の未遂について解説します。実際に侵入を果たさなくても、行為の段階によっては処罰対象となるのです。

刑法第132条で未遂罪も処罰対象とされていること

刑法第132条では「この法律に規定する罪の未遂は、罰する」と定められています。そのため、建造物侵入罪も未遂であっても処罰される可能性があります。

つまり、実際に建物の中に入らなくても、侵入を試みた段階で罪に問われる場合があるのです。

これは、社会秩序や安全を守る観点から、未然に違法行為を防ぐために設けられています。

「未遂だから大丈夫」とは決して言えない点を押さえておく必要があるでしょう。

未遂とはどの段階か ― 侵入を始めたが既遂に至らない例

未遂の成立は「実行の着手」があったかどうかで判断されます。たとえば、鍵を壊して扉を開けようとしたが、警察に見つかって入れなかった場合は未遂となります。

また、塀を乗り越えて敷地に侵入しようとしたが、途中で止められたケースも未遂にあたります。要するに「犯罪を始めているが、目的を達していない段階」です。

このように、未遂の範囲は広く、実際の判断は状況ごとに行われます。

行為の程度によっては、未遂であっても既遂に近い処罰が科されることもあるのです。

未遂でも既遂と同じ法定刑が適用可能であること

刑法では、未遂であっても既遂と同じ法定刑が定められています。つまり、建造物侵入罪の未遂でも「3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金」が適用され得るのです。

ただし、実際の量刑は裁判官の判断により、既遂より軽くなることが多いです。これは、行為が未完成である点が考慮されるためです。

しかし、未遂であっても動機が悪質な場合や、被害者に心理的被害を与えた場合厳しい処罰となる可能性も否定できません。

そのため「未遂なら軽く済む」という油断は危険だといえるでしょう。

量刑が軽くなる可能性 ― 実際の情状による違い

未遂罪では、既遂に比べて量刑が軽くなる傾向があります。例えば、侵入しようとしたが直前で中止した場合や、被害が発生していない場合は、情状酌量が働きやすいです。

また、初犯であること、反省の態度が見られること、被害者との示談が成立していることなども軽減要素として考慮されます。

一方で、窃盗や強盗など重大な犯罪と結びついた侵入未遂の場合は、未遂であっても重く扱われる可能性があります。

つまり、未遂だからといって一律に軽い処罰になるわけではなく、個別の事情に大きく左右されるのです。

建造物侵入罪と退去拒否はどう違う?関連する刑罰や法律との関係

建造物侵入罪と混同されやすいのが「退去拒否(不退去罪)」です。両者は刑法第130条で規定されていますが、行為の内容が異なるため明確に区別されています。

退去拒否(不退去罪)の定義 ― 刑法第130条後段に規定されている行為

不退去罪は、正当な理由がなく建物からの退去を求められたにもかかわらず、その場所に居続ける行為を処罰するものです。刑法第130条の後段に規定されています。

つまり、最初は正当に立ち入った場合でも、その後に退去を命じられたのに従わなければ不退去罪が成立します。

典型的な例は、飲食店や公共施設での居座り行為です。

「入ること」が問題となるのが侵入罪、「出ないこと」が問題となるのが不退去罪と覚えておくとわかりやすいでしょう。

不退去罪が成立する要件 ― 退去要求を受けていること・正当な理由がないこと

不退去罪の成立には、まず管理者や所有者から明確に「退去してください」と要求されていることが必要です。暗黙的な雰囲気ではなく、具体的な要求が前提となります。

その上で、正当な理由なく居続けた場合に罪が成立します。例えば、営業時間が終わったのに店舗から出ない、閉館時間後の図書館に残っているといったケースです。

一方で、緊急避難や正当な事情がある場合には成立しないこともあります。

このように、退去要求の有無が重要な分かれ目になるのです。

しばらく居座ることで成立する例 ― 店舗・公共施設での実例

不退去罪は、特別な犯罪行為をしなくても成立することがあります。例えば、飲食店で支払いを済ませた後に長時間居座るケースや、イベント終了後に会場から出ないケースなどです。

また、公共施設で利用時間を超えても退去せず、注意を受けても従わない場合も不退去罪に該当します。

これらは一見些細な行為に思えるかもしれませんが、管理権を侵害する点で犯罪とされるのです。

つまり、「自分の意思で居続ける」行為も処罰対象になり得ることを理解しておく必要があります。

不退去罪と建造物侵入罪の関係 ― 居続ける行為かどうかで区別される

不退去罪と建造物侵入罪は、同じ条文で規定されていますが、成立する行為が異なります。前者は「退去要求後の居座り」、後者は「正当な理由なく入ること」です。

例えば、商業施設に無断で入った場合は建造物侵入罪ですが、営業時間後に出るよう求められて居座った場合は不退去罪になります。

このように、入った時点か、出ない時点かという時間の違いで区別されるのです。

両者の違いを理解することは、誤った認識を避けるためにも重要だといえるでしょう。

建造物侵入罪が問われやすいケースとは?学校・店舗・空き家などの事例

次に、実際に建造物侵入罪として摘発されやすい事例を見ていきます。日常生活の中でも意外な場面で成立することがあるため注意が必要です。

学校や教室への深夜侵入、校庭・校舎の敷地への無断立入りの例

代表的な例が学校への不法侵入です。特に、夜間に校舎や校庭に忍び込むケースは建造物侵入罪に該当します。遊び半分であっても罪に問われる可能性があります。

また、教室や体育館など管理権が及ぶ施設に入る行為も処罰対象です。近年では、SNSに投稿する目的での侵入も問題となっています。

「ちょっとした探検気分」であっても、犯罪に発展する点を軽視すべきではありません。

学校は典型的な侵入罪の対象であることを理解しておく必要があるでしょう。

店舗や百貨店での万引き目的・無断で侵入するケース

商業施設建造物侵入罪の対象です。営業時間外に侵入する行為はもちろん、万引きなどの不法な目的で入る場合も侵入罪が成立します。

例えば、営業時間中に通常の客を装って入店しても、万引きをする目的があれば「正当な理由がない」と判断される場合があります。

つまり、入店自体は自由でも、その目的次第で犯罪に変わるのです。

この点は、一般の人にとって誤解しやすい部分ではないでしょうか。

空き家や別荘、閉まっている施設への侵入

管理者が存在する空き家別荘建造物侵入罪の対象となります。たとえ人が住んでいなくても、所有権や管理権が残っている場合には「看守する建造物」とされます。

また、閉館時間後の施設に侵入した場合も罪に問われます。これらは管理権の侵害として扱われるためです。

特に、心霊スポットや廃墟探検と称して侵入する若者が摘発される事例も報告されています。

このようなケースでは「空き家だから大丈夫」という誤解がトラブルの原因になるのです。

盗撮目的で更衣室やトイレに侵入する場合など

もっとも悪質とされるのが、盗撮や性的目的での侵入です。更衣室やトイレに無断で入る行為は、プライバシーの侵害が甚大であるため厳しく処罰されます。

このような場合、建造物侵入罪だけでなく迷惑防止条例違反やわいせつ関連の罪も併せて適用される可能性があります。

社会的非難も非常に大きく、前科がつくことで将来への影響も深刻です。

つまり、性的動機を伴う侵入は最も重い処罰に発展しやすいケースといえるでしょう。

建造物侵入罪で逮捕されたらどうなる?流れと対応方法を解説

実際に建造物侵入罪で逮捕された場合、どのような手続きが進むのかを知っておくことは重要です。ここでは、逮捕から裁判に至るまでの一般的な流れと、取るべき対応を解説します。

警察による逮捕・取り調べの流れ

建造物侵入罪現行犯逮捕される場合は、その場で警察官に身柄を拘束され、警察署に連行されます。その後、事情聴取や取り調べが行われ、調書が作成されます。

逮捕後は、最長48時間以内検察官へ送致されることになります。検察官は事件内容を精査し、勾留請求するかどうかを判断します。

取り調べでは、動機や侵入の経緯、反省の態度などが重要な要素として確認されます。

初動の対応が今後の処分に大きな影響を与えるため、冷静に行動することが不可欠です。

勾留されるかどうかの判断基準 ― 初犯かどうか・逃亡・証拠隠滅の恐れなど

逮捕後、検察官が勾留を請求し、裁判官が認めた場合は最大20日間拘束される可能性があります。勾留の可否は、逃亡の恐れや証拠隠滅の可能性、再犯の危険性などで判断されます。

例えば、初犯で住居が安定しており、反省の態度が見られる場合は、勾留されず釈放されるケースもあります。

一方、繰り返しの犯行や悪質な目的がある場合は、勾留が認められる傾向があります。

勾留されるかどうかは、その後の生活に大きく影響するため、状況を正しく理解しておくことが大切です。

弁護士をつけるメリット ― 示談・情状酌量を求めるなど

逮捕された場合、弁護士を依頼することには大きなメリットがあります。まず、取り調べで不利な供述を避けるためのアドバイスを受けられる点が重要です。

さらに、被害者との示談交渉を弁護士が行うことで、不起訴処分や量刑の軽減につながることもあります。特に、被害感情が強いケースでは示談の有無が大きなポイントとなります。

また、裁判に進んだ場合でも、情状酌量を求めて執行猶予を得られる可能性が高まります。

弁護士の存在は、事件解決における強力な味方となるのです。

不起訴になる可能性・起訴された後の裁判での戦い方

建造物侵入罪の事件は、示談が成立したり反省が見られる場合には不起訴処分となることも少なくありません。不起訴になれば前科はつかず、社会生活への影響も最小限で済みます。

しかし、悪質な動機や前科がある場合には起訴されることもあります。その場合は、裁判で動機や事情を丁寧に説明し、量刑の軽減を目指すことが重要です。

裁判では、反省の態度や被害者との和解が大きな情状材料となります。

起訴後も対応次第で結果は変わるため、最後まであきらめず取り組むことが求められるでしょう。

建造物侵入罪に関するよくある質問とその答え

ここからは、建造物侵入罪に関してよく寄せられる疑問をQ&A形式で整理していきます。

「鍵が開いていたら侵入になるか?」という疑問

鍵が開いていたとしても、正当な理由がなければ侵入罪は成立します。鍵の有無はあくまで侵入の方法に関する問題であり、管理権を侵害した事実に変わりはありません。

例えば、無断で開いている空き家に入った場合でも、管理者が存在していれば侵入罪となります。

つまり、「開いていたから入っていい」とはならないのです。

管理者の許可があるかどうかが最大のポイントとなります。

「立ち入り禁止の看板がなくても侵入になるか?」という疑問

立ち入り禁止の表示がなくても、管理権を侵害すれば建造物侵入罪は成立します。看板は警告の役割を果たしますが、表示がないからといって自由に入れるわけではありません。

例えば、店舗の営業時間外に入る、学校に無断で立ち入るといった行為は看板がなくても処罰されます。

つまり、看板の有無にかかわらず、正当な理由のない立ち入りは違法なのです。

この誤解は非常に多いため、注意が必要です。

「正当な理由とは何が含まれるか?」という疑問

正当な理由には、管理者からの許可や、緊急避難、業務上必要な行為などが含まれます。例えば、消防士が火災現場に立ち入る、修理業者が依頼を受けて建物に入るといったケースです。

一方で、「興味本位」「遊び」「探検」などは正当な理由とはみなされません。動機が重要視されるのです。

裁判では、正当な理由があったかどうかが最も大きな争点となることが多いです。

客観的に見て合理的かどうかが判断基準となります。

「未遂・不退去の場合、どのような罰になるか?」という疑問

未遂の場合は、既遂と同じ法定刑が規定されていますが、実際には軽く扱われることが多いです。ただし、動機が悪質な場合は既遂と同等の処罰が科されることもあります。

不退去罪についても法定刑は建造物侵入罪と同じく「3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金」です。実際の処分は、行為の悪質性や状況によって変わります。

つまり、未遂や不退去であっても決して軽視できない犯罪だといえるでしょう。

「少しの油断で犯罪になる」ことを改めて理解しておく必要があります。

まとめ|建造物侵入罪とは?成立要件・法定刑・未遂・退去拒否まで総復習

ここまで、建造物侵入罪について詳しく解説してきました。ポイントを整理すると次の通りです。

・建造物侵入罪は刑法第130条で規定されており、正当な理由なく建物や敷地に入ることで成立する。
・成立要件には「正当な理由の欠如」「管理権のある建造物」「侵入行為」が含まれる。
・法定刑は「3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金」で、未遂も処罰対象となる。
・不退去罪とは「出ないこと」が処罰される点で区別される。
・学校や店舗、空き家など身近な場所でも成立する可能性が高い。
・逮捕された場合は、弁護士のサポートや示談が重要な意味を持つ。

建造物侵入罪は軽い気持ちでも成立してしまう身近な犯罪です。知らないうちに法律を犯さないためにも、正しい知識を持つことが何よりも大切だといえるでしょう。

今回の記事を通して、少しでも法律理解を深め、日常生活のリスク回避につなげていただければ幸いです。