日常の中の「もしも」に備える法律ノート

知人の犯罪を知ってしまったら?あなたに法律リスクや罰則の可能性はある?

ふとした瞬間、身近な人が法律に触れる行動をしていたことを知ってしまった。そんなとき、「自分には関係ない」と思いたくなるのが自然です。しかし、その情報を知っているだけで、法律リスクや罰則の可能性があるとしたらどうでしょうか?

この記事では、「知人の犯罪を知っただけで罪になるのか?」「警察に通報しないと罰則があるのか?」といった疑問に対し、法律的な視点からわかりやすく解説していきます。

不安を感じたとき、正しい知識を持っていれば冷静に対応できるはずです。万が一のときに自分を守るためにも、最後までしっかり読み進めてください。

知人の犯罪を知っただけで法律リスクや罰則の可能性はある?

この章では、知人の犯罪について「知っただけ」という状況で、自分にどのような法律リスクがあるのかを確認していきます。

通報義務は原則としてないから

まず押さえておきたいのは、一般市民には犯罪を警察に通報する義務が法律で定められているわけではないという点です。刑事訴訟法239条では「官吏または公吏は、職務上犯罪があると思料するときは告発しなければならない」とされているため、これは主に公務員や一部の専門職に向けたルールです。

一般の人が知人の犯罪に気づいたとしても、それを警察に知らせなかったからといって、原則的には法的な罰則を受けることはありません。

とはいえ、それはあくまで「知っただけ」の話。行動によっては話が変わってきます。

例えば、知人の犯罪を知りつつ、それに協力してしまった場合には、話は別です。

ただし、犯人を助けると「犯人蔵匿」の罪になるから

知人が犯罪を犯したと知りながら、その人を自宅にかくまったり、逃亡を手助けしたりすると、「犯人蔵匿罪」や「犯人隠避罪」に問われる可能性があります。

これらは刑法103条に規定されており、実際に罰則の対象になる可能性がある犯罪です。知っていて手を貸した場合には「知っただけ」とはみなされず、明確な加担行為とされてしまうのです。

また、「何もしていない」というつもりでも、知らないふりをして逃走を黙認したと判断されるケースもあり得るため、注意が必要です。

状況によっては、知らなかったと言い張るのが難しくなることもあります。

知人の犯罪を警察に通報しないと法律リスクや罰則の可能性はある?

通報しないこと自体が罪に問われるのか、またどのようなケースで問題になるのかを見ていきましょう。

通報しなくても基本的に罪には問われないから

前述の通り、一般市民には通報義務がないため、基本的には通報しなかったからといって罪に問われることはありません。

ただし、これには例外があります。特定の立場にある人(医療関係者や児童相談所の職員など)には、職務上、通報義務が課せられていることがあります。

また、重大な事件に関しては、通報を怠ることが道義的な非難を受ける原因になることもあります。

道義的な問題と法律的な問題は異なるという点を理解しておきましょう。

ただし薬物事件では「共同所持」と疑われる場合があるから

特に注意が必要なのは薬物事件です。知人が薬物を所持している現場に一緒にいた場合、「共同所持」として自分も罪に問われる可能性があります。

たとえ自分のものではなくても、その場の状況によっては「知っていて一緒に持っていた」と判断される場合もあるのです。

これは刑法の解釈の問題で、故意や認識の有無が重視されることから、自分には関係ないと安心してはいけません。

特に車や部屋などの「共有スペース」で薬物が発見された場合には注意が必要です。

知人の犯罪に関わっていなくても法律リスクや罰則の可能性があるケース

たとえ犯罪に直接関わっていなかったとしても、知人の違法行為に関する物やお金を受け取ったり、証拠を隠す行為をしたりすることで、自分自身にも法律リスクが及ぶことがあります。

犯罪を知って物やお金を受け取ると「犯罪収益等」に問われるから

例えば、知人が強盗や詐欺などで得たお金を「ちょっと預かってほしい」と言ってきたとします。そのお金が犯罪で得たものであると知っていながら受け取った場合、「犯罪収益等隠匿罪」(組織犯罪処罰法)に問われる可能性があります。

これは単なる「物の受け取り」でも違法行為として扱われる非常に重い罪です。

また、「知らなかった」と主張しても、後から警察の取り調べで知っていたと判断されると、同様に処罰されます。

「頼まれたから仕方なく」などという言い訳は通用しないケースが多いため、怪しい物品や金銭の受け取りは絶対に避けるべきです。

証拠を隠すと「証拠隠滅」の可能性があるから

知人が何か違法なことをしたときに、その証拠となるもの(スマホ、書類、衣服など)を隠したり処分したりすると、「証拠隠滅罪」に問われる可能性があります。

これは刑法104条に定められており、「第三者が行った場合でも処罰される」点が重要です。つまり、犯罪に関与していなかったとしても、証拠隠しの行為そのものが罪になるのです。

また、これもよくある誤解ですが、「助けたつもりだった」「頼まれただけ」といった理由は、証拠隠滅罪の成立を防ぐ理由にはなりません。

仮に警察の捜査が進行中であれば、その行為はさらに重く見られることになるでしょう。

知人の犯罪をかくすとどんな法律リスクや罰則の可能性がある?

知人が犯罪を犯したと知っていながら、それをかくした場合には、より深刻な法律リスクが伴います。ここでは、その具体的なリスクと罰則について解説します。

犯人蔵匿・隠避の罪で処罰されるから

先ほども少し触れましたが、「犯人蔵匿罪」(刑法103条)は、犯人が逃げるのを助けたり、警察から隠すような行為をした場合に適用される犯罪です。

たとえば、「警察が来たらこの家に隠れていて」などと協力してしまうと、たとえそれが一時的なものでも蔵匿行為とみなされることがあります。

また、警察の捜査から逃れるために車を貸したり、別の場所に連れて行ったりする行為も「隠避」とされ、同様に処罰の対象になります。

この罪は懲役3年以下または罰金に処せられる可能性があるため、安易に手を貸すべきではありません。

共犯として扱われるリスクもあるから

さらに一歩進んで、知人の犯罪に関わったと判断されると「共犯」として処罰されるリスクも存在します。

たとえば、知人が万引きをし、それを見ていた自分が「早く逃げて!」と助言した場合、それだけで「幇助犯」として罪に問われる可能性があります。

幇助犯とは、犯罪を直接行っていなくても、犯罪を助けた行為により罰せられる立場のことをいいます。

このように、知人のためにと思ってした行為が、自分にとって大きなリスクになることがあるのです。

知人の犯罪をSNSで話すと法律リスクや罰則の可能性はある?

誰でも簡単に情報を発信できる現代では、SNSに「知人がこんな犯罪をしていた」と投稿したくなることもあるかもしれません。しかし、その行為が法律リスクにつながる可能性もあります。

虚偽の内容を広めると「偽計業務妨害罪」になるから

もしも事実ではないこと、あるいは確認が取れていない情報をSNSで発信した場合、相手の仕事や評判に悪影響を与えることがあります。そうなると、「偽計業務妨害罪」(刑法233条)に該当する可能性が出てきます。

例えば、「知人が万引きした」と事実無根の投稿をした場合、それを見た他人がその知人の勤め先に連絡するなどの行動を取れば、業務に支障が出ることもあります。

この罪に問われると、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

つまり、何気ない投稿が重大な犯罪行為と判断されてしまうこともあるのです。

確かな証拠なしで拡散すると名誉毀損にもなり得るから

仮にその内容が事実であったとしても、それを広くSNSなどで拡散することで、「名誉毀損罪」(刑法230条)に問われる可能性があります。

名誉毀損は「真実かどうか」だけでなく、「社会的評価を低下させたかどうか」が基準となります。

たとえば、「知人が不正にお金を取っていた」と実際にあったことでも、SNSなどで第三者に知らせることで、相手の社会的評価が下がったと判断されると、処罰対象となります。

このように、真実を発信したつもりでも、思わぬ形で自分が責任を問われることになるので、SNSの使い方には注意が必要です。

未成年が知人の犯罪を知ったときの法律リスクや罰則の可能性

「未成年だから大丈夫」という考えは危険です。未成年であっても、法律上の責任が問われることがあります。この章では、未成年が巻き込まれるリスクについて詳しく見ていきましょう。

未成年でも犯人蔵匿や共犯の疑いは例外なく問われるから

まず大前提として、未成年であっても犯罪を助けた場合には、「犯人蔵匿罪」や「共犯」の罪に問われることがあります。

刑法においては、14歳以上であれば刑事責任を問うことができるとされており、中学生や高校生でも対象になります。

たとえば、友達が万引きしたのを見て、「逃げろ」と手助けしたり、盗んだ物を持ち帰ってあげたりした場合、その行為が犯罪と認定されることもあります。

「子どもだから許される」という考えは法律上通用しないのです。

親や大人に相談すれば守られる可能性があるから

一方で、未成年であれば「正直に話す」「大人に相談する」といった対応を取ることで、法的なリスクを軽減できる可能性もあります。

たとえば、すぐに親や先生、弁護士に相談したことで、犯罪に巻き込まれるのを防げたというケースもあります。

何かおかしいと感じたら、一人で抱え込まず、信頼できる大人に相談することが非常に大切です。

判断を誤ると、自分の将来に大きな影響を及ぼすリスクがあることを覚えておきましょう。

弁護士に相談すれば知人の犯罪の法律リスクや罰則の可能性を回避できる?

犯罪に関する情報を知ってしまったとき、誰に相談すればよいか悩むこともあるでしょう。そんなとき、頼りになるのが法律の専門家である弁護士です。

弁護士には守秘義務があるから安心できるから

弁護士には法律で「守秘義務」が課せられており、相談内容を第三者に漏らすことはありません。

つまり、知人の犯罪について相談しても、それが外部に漏れることはないのです。

これは法律によって保障されている仕組みであり、安心して相談できる理由の一つです。

「誰かに話すのは怖い」と思うときほど、まずは弁護士を頼ることをおすすめします。

通報や対応を一緒に考えてもらえば不安を減らせるから

また、弁護士は単に話を聞いてくれるだけでなく、「どう行動すべきか」「通報すべきかどうか」など、具体的な対応策も一緒に考えてくれます。

自分だけでは判断できないような複雑な状況でも、適切なアドバイスを受けることで冷静に対応することができます。

知らず知らずのうちに法に触れてしまう前に、弁護士と一緒に対応を考えることが、もっともリスクを避ける方法といえるでしょう。

まとめ:知人の犯罪を知ったときの法律リスクと罰則の可能性への正しい対応

知人の犯罪を知ってしまったとき、その事実をどう受け止め、どのように行動するかによって、自分自身のリスクも大きく変わってきます。

知っただけで罪に問われることは基本的にありませんが、助けたり隠したりすれば「犯人蔵匿罪」や「共犯」として処罰される可能性もあります。また、SNSでの発言も名誉毀損や業務妨害につながるおそれがあります。

特に薬物事件や金銭の受け取りなど、間接的に関わったと見なされるリスクもあるため、「自分は関係ない」と思い込まず、慎重に行動することが必要です。

困ったときは、まず信頼できる大人や弁護士に相談し、冷静に正しい対応を考えましょう。法律リスクを避けるためには、情報と判断力が何よりの武器になります。