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いじめは犯罪になるの?逮捕される可能性と法律的な責任を徹底解説

学校や職場など、さまざまな場所で問題になっている「いじめ」。ニュースでも「いじめを苦にした自殺」や「いじめ加害者の逮捕」といった報道を目にすることがあります。しかし、実際のところ、いじめは法律上「犯罪」として処罰されることがあるのでしょうか。

この記事では、いじめがどのような場合に刑法で処罰の対象となるのか、逮捕される可能性やその条件についてわかりやすく解説します。また、被害にあったときに取るべき行動や相談先についても紹介します。

いじめは単なる「悪ふざけ」や「からかい」では済まされない場合があります。法律の視点から、自分や周囲を守るために必要な知識をしっかり理解しておきましょう。

いじめは犯罪になるの?逮捕される可能性を解説

いじめそのものを直接処罰する「いじめ罪」という法律は存在しませんが、いじめの中には刑法に違反する行為が多く含まれています。内容によっては、警察が介入し、加害者が逮捕・起訴されることもあります。

いじめ罪は存在しないが法律違反になる行為がある

法律上、「いじめ罪」という特定の罪名はありません。しかし、実際のいじめ行為の多くは、刑法で定められた他の犯罪行為に該当することがあります。たとえば、殴る・蹴るなどの暴力を振るえば暴行罪、相手にけがを負わせれば傷害罪となります。

また、「お金を持ってこい」「無理やり何かをさせる」といった行為は恐喝罪強要罪にあたる可能性があります。このように、いじめの中には複数の犯罪が重なっているケースも珍しくありません。

つまり、「いじめだから軽い問題」というわけではなく、内容によっては明確に犯罪として処罰の対象になるのです。

14歳以上なら刑事責任を問われる可能性がある

日本の法律では、刑事責任を問われる年齢が14歳以上と定められています。したがって、中学生や高校生であっても、悪質ないじめを行えば警察に逮捕され、刑罰を受ける可能性があるのです。

14歳未満の場合は刑事罰ではなく、家庭裁判所の審判で「少年院送致」「保護観察」などの保護処分が科されることがあります。どちらにしても、いじめが発覚すれば法的な責任を免れることはできません。

年齢が若いからといって、法律の対象外になるわけではないという点は非常に重要です。

逮捕される条件は証拠の有無と行為の重大さ

いじめで逮捕されるかどうかは、単に「被害を受けた」と訴えるだけではなく、証拠があるかどうか行為の内容がどれほど重大かによって判断されます。被害者の証言だけでなく、LINEのメッセージ、SNSの投稿、録音、動画などの証拠が重要です。

また、相手がケガをした、金品を奪われた、自殺をほのめかすほど追い詰められたなど、被害の程度が重い場合は、警察が積極的に捜査を行うことになります。

実際に、いじめが原因で警察が動くケースでは、周囲の証言や証拠の記録が大きな決め手となっています。

刑法でいじめが処罰される主なケース

ここでは、刑法上どのようないじめ行為が犯罪として処罰されるのかを具体的に見ていきましょう。身体的・精神的・経済的な側面から、いじめは複数の犯罪に該当する可能性があります。

身体的な攻撃があった場合

相手を叩く、蹴る、物を投げつけるといった行為は暴行罪にあたります。暴行罪は、実際にけがをさせていなくても成立する犯罪です。「軽く叩いただけ」「じゃれただけ」という言い訳は通用しません。

もしケガを負わせた場合は、さらに重い傷害罪が適用され、刑罰も厳しくなります。暴力的ないじめはすぐに犯罪に発展するリスクが高いため、非常に危険です。

脅しや無理な要求をした場合

「言うことを聞かないと殴る」「金を持ってこないと許さない」などの脅迫的な言動は、脅迫罪恐喝罪にあたる可能性があります。また、「あの子を無視しろ」「一緒にいじめろ」といった行為の強要も強要罪に該当します。

このような精神的な圧力を加えるいじめは、被害者に深刻な心理的ダメージを与えるだけでなく、法律上も明確な犯罪として扱われます。

名誉や信用を傷つけた場合

人前で悪口を言ったり、SNSで誹謗中傷を拡散したりする行為は、名誉毀損罪侮辱罪にあたります。特に、SNSの投稿は証拠として残りやすく、警察が動くきっかけになることも少なくありません。

「ネットだからバレない」と考えるのは危険です。匿名の投稿でも発信者情報開示請求によって、身元が特定されるケースが増えています。

物を奪ったり金品を脅し取った場合

他人の持ち物を勝手に取ったり、脅してお金を要求したりする行為は、刑法で明確に犯罪とされています。前者は窃盗罪、後者は恐喝罪に該当します。

いじめの中で「財布を出せ」「昼ごはんを買ってこい」などと命令して物を取る行為は、被害者が同意しているように見えても、実際には恐怖心によるものです。そのため、本人の意思に反して取らせたと判断されれば、犯罪として立件されることがあります。

このような行為は、学校内の出来事であっても警察の介入対象となるため、決して「子どものケンカ」とは片づけられません。

暴行罪・傷害罪が適用されるいじめの例

暴行罪や傷害罪は、いじめの中でも最も多く適用される罪の一つです。特に、暴力を伴ういじめは警察が早期に動く傾向にあり、被害届が提出されれば加害者が逮捕される可能性も高くなります。

叩くや蹴るなどの行為が暴行罪になることがある

暴行罪は、実際にけがをさせなくても成立する犯罪です。たとえば、「軽く叩いただけ」「背中を押しただけ」などの行為でも、相手が不快に感じたり危険を感じたりすれば犯罪として扱われます。

刑法208条では「暴行を加えた者は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金に処する」と定められています。つまり、軽い暴力でも立派な犯罪行為です。

「悪ふざけのつもり」でも暴行罪になることがあるということを理解しておく必要があります。

けがをさせた場合は傷害罪にあたることがある

暴行によって相手がけがをした場合は、暴行罪ではなく傷害罪(刑法204条)が適用されます。たとえば、殴ってあざができた、蹴って骨折させたなどが典型的な例です。

傷害罪は暴行罪よりも重い犯罪であり、刑罰も厳しくなります。法律では「人の身体を傷害した者は15年以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められています。

軽いけがであっても、故意に与えた場合は容赦なく刑事責任を問われることがあります。

けがの程度によって刑の重さが変わる

けがの内容が軽い場合は略式起訴で罰金刑にとどまることもありますが、重傷や後遺症が残るほどの傷害を与えた場合には実刑判決が下されることもあります。特に、複数人で暴行を加えた場合や、継続的な暴力の場合は刑が重くなりやすいです。

被害者が自殺や精神疾患に追い込まれた場合は、過失致死罪などが適用されることもあります。いじめが人の命を奪う結果になることもあるのです。

脅迫罪・強要罪にあたるいじめの行為とは

身体的な暴力だけでなく、言葉や態度による脅しも犯罪になります。恐怖心を与えるような言動は、たとえ直接的な暴力を伴わなくても脅迫罪強要罪に該当します。

「殴る」や「殺す」といった脅しは脅迫罪になる

「殴るぞ」「殺してやる」などといった発言をして相手を怖がらせた場合、それだけで脅迫罪にあたります。刑法222条によると、「生命、身体、自由、名誉または財産に害を加える旨を告知して脅迫した者」は処罰の対象です。

実際に暴力を振るわなくても、言葉だけで相手を脅す行為が犯罪と認められることがあります。LINEやSNSでのメッセージでも証拠として認められるケースがあります。

暴力や脅しで人に無理やり何かをさせると強要罪になる

強要罪は、相手の意思に反して何かをさせたり、何かをやめさせたりする行為に適用されます。たとえば、「土下座しろ」「先生にウソを言え」と脅して従わせた場合などが該当します。

刑法223条では「暴行または脅迫を用いて人に義務のないことを行わせた者は、3年以下の懲役に処する」と規定されています。つまり、強要罪は被害者の自由を奪う非常に重い犯罪なのです。

言葉や態度で他人を支配しようとするいじめは、立派な犯罪行為として扱われることを理解しておく必要があります。

脅しただけでも罪に問われることがある

脅迫罪や強要罪は、実際に行動に移さなくても「脅した時点」で成立する犯罪です。「脅かしただけ」「冗談だった」という言い訳は通用しません。

また、脅しが繰り返されると、被害者は強い恐怖心を抱き、登校拒否や精神疾患を発症するケースもあります。警察はそのような被害の深刻さを重く見て、早期に介入することがあります。

名誉毀損罪・侮辱罪にあたるSNSやネットいじめ

SNSやネット掲示板でのいじめも深刻な社会問題です。投稿内容によっては、名誉毀損罪や侮辱罪に該当し、発信者が特定されて逮捕・起訴されることもあります。

根拠のある悪口を広めると名誉毀損罪になる

「〇〇が犯罪を犯した」「〇〇は不潔だ」など、事実を含む発言であっても、それが他人の社会的評価を下げるものであれば名誉毀損罪が成立します。つまり、真実であっても人を傷つける内容なら犯罪となる可能性があります。

SNSで投稿された内容は拡散されやすく、短時間で多くの人に届くため、被害が広がりやすいのが特徴です。実際に、SNS投稿が原因で警察が捜査を始める事例も増えています。

根拠のない誹謗中傷は侮辱罪になることがある

「バカ」「きもい」「消えろ」など、根拠のない誹謗中傷をネットに書き込む行為は侮辱罪に該当することがあります。2022年の法改正により、侮辱罪の刑罰は「1年以下の懲役または拘留、もしくは30万円以下の罰金」に引き上げられました。

つまり、たった一言の悪口でも刑事事件になる時代なのです。SNSを利用する際は、相手を傷つけるような発言をしないことが大切です。

匿名での投稿でも特定されて責任を問われることがある

ネット上で匿名で投稿しても、警察や被害者がプロバイダに発信者情報の開示を求めれば、投稿者を特定することが可能です。実際に、匿名掲示板やSNSの投稿が原因で逮捕された例もあります。

ネットはいくら匿名でも「完全な隠れ場所」ではないということを忘れてはいけません。

窃盗罪・恐喝罪として扱われるケースもある

金品を奪う、脅してお金を出させるといった行為はいじめの中でも特に悪質なもので、刑法上の窃盗罪恐喝罪として処罰されることがあります。これらは明確に「犯罪」とされる行為であり、成人と同様に少年でも逮捕・送致されることが珍しくありません。

他人の物を勝手に持ち去ると窃盗罪になる

「人の持ち物を勝手に取る」「友達の文房具を使って返さない」などの行為は、たとえ金額が小さくても窃盗罪(刑法235条)にあたる可能性があります。学校での出来事だからといって軽く見られるものではありません。

窃盗罪の罰則は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」と非常に重く、未成年でも家庭裁判所を通じて厳しい処分を受けることがあります。

脅してお金や物を取ると恐喝罪になる

「金を持ってこい」「金がないなら殴るぞ」と脅してお金を取る行為は、恐喝罪(刑法249条)に該当します。恐喝罪は相手を怖がらせて金品を得る行為全般を指し、非常に重い罪として扱われます。

たとえ少額でも、繰り返し行っていれば立派な犯罪行為です。特にグループで行っている場合は、「共犯」として全員が処罰の対象になることもあります。

「万引きをさせる」などの強要も処罰の対象になる

いじめの中で「コンビニで何か盗んでこい」「人の財布を取ってこい」と命令する行為は、強要罪や教唆(そそのかし)として刑事責任を問われることがあります。

本人が直接盗んでいなくても、他人に犯罪をさせた場合には「共犯」になる可能性があるのです。このような行為は被害者だけでなく、巻き込まれた第三者にも被害を広げる非常に危険な行動です。

少年事件として扱われる場合の流れと処分

いじめの加害者が未成年である場合、事件は「少年事件」として扱われます。警察や家庭裁判所を通じて処理され、必要に応じて保護処分や少年院送致などの措置が取られます。

警察や検察が捜査を行い少年法が適用される

いじめで刑法に触れる行為があった場合、警察が捜査を行い、必要に応じて検察庁に送致します。その後、事件の内容や本人の年齢によって少年法が適用されます。

少年法は「更生の機会」を重視しており、刑罰ではなく教育的な措置を取ることが特徴です。ただし、重大事件では実刑判決に近い厳しい処分となることもあります。

家庭裁判所で審判を受け保護処分が下されることがある

送致された事件は家庭裁判所で審判が行われ、再犯防止や生活環境の改善を目的とした保護処分が下されます。処分には「保護観察」「児童自立支援施設送致」「少年院送致」などがあります。

いじめ行為の内容や反省の度合いによって処分の重さが決まるため、被害が深刻な場合は厳しい措置となる傾向にあります。

内容によっては少年院や保護観察となることもある

暴行恐喝などの悪質ないじめを行った場合は、少年院に送致されることがあります。特に、被害者が長期にわたり苦しんだり、命に関わる事態になった場合には、実刑に近い処分が下されることもあります。

一方、比較的軽い場合でも保護観察処分が言い渡され、一定期間、家庭裁判所の指導のもとで生活態度を改善することが求められます。

いじめで逮捕された実例とその背景

実際に、いじめが原因で警察が動き、加害者が逮捕された事例は少なくありません。ここでは代表的なケースを紹介し、なぜ逮捕に至ったのかを考えていきましょう。

大津市のいじめ事件では暴行や恐喝が問題になった

2011年に起きた滋賀県大津市中学生いじめ自殺事件では、同級生による暴行恐喝が行われていたことが明らかになりました。学校や教育委員会の対応が遅れたことも問題となり、全国的に大きな議論を呼びました。

事件後、警察が再捜査に乗り出し、加害者の少年らは暴行罪や恐喝罪の疑いで書類送検されています。この事件をきっかけに、全国の学校でいじめ防止対策が強化されました。

中学生が損害賠償を命じられた判決がある

民事裁判では、いじめによって被害者が受けた精神的苦痛に対して損害賠償を命じられるケースもあります。中学生のいじめ加害者が、被害者の家族に数百万円の賠償金を支払うよう命じられた判例もあります。

刑事責任だけでなく、民事責任も発生するという点は非常に重要です。いじめによって被害者や家族が受けた損害は、金銭的にも大きな負担を生むことがあります。

学校が隠した記録や証拠が後に発見された例もある

いじめ事件の中には、学校や教育委員会が当初「いじめはなかった」と報告していたにもかかわらず、後に証拠の記録やメモが見つかり、事実が明らかになるケースもあります。

このような場合、被害者や遺族が声を上げ、再調査によって加害者が処分を受けることがあります。隠された事実が明るみに出ることも多いため、証拠を残すことが非常に大切です。

いじめを受けたときに取るべき行動と相談先

いじめを受けてつらい思いをしている場合、ひとりで抱え込む必要はありません。早めに信頼できる大人や専門機関に相談することが、自分を守る第一歩です。

証拠を残しておくことが大切

いじめの内容を証明するために、LINEのやりとりや録音・録画、SNSの投稿などを保存しておくことが重要です。これらは後に警察や弁護士に相談する際の有力な証拠となります。

「証拠がない」と泣き寝入りしてしまうケースも多いですが、今はスマホで簡単に記録を残すことができます。どんな小さなことでも記録しておくことが、あなたを守ることにつながります。

親や先生に早めに相談する

まずは身近な大人に相談しましょう。親や先生に話すことで、学校全体で対策を取ってもらえる場合があります。いじめを放置すると事態が悪化することが多いため、早めの相談が何よりも大切です。

勇気を出して声を上げることで、周囲が動き、状況が変わるきっかけになります。

教育委員会や弁護士、人権相談窓口などに連絡する

もし学校に相談しても解決しない場合は、教育委員会や警察、弁護士、人権相談窓口などに相談しましょう。特に、法的なトラブルや暴力を伴ういじめの場合は、弁護士への相談がおすすめです。

全国には「いじめ110番」や「子どもの人権110番」など、無料で相談できる窓口が多数あります。一人で悩まず、専門家の力を借りることが何よりの解決策になります。

まとめ|いじめで逮捕される可能性と刑法で問われるケースを理解しよう

いじめは決して「子どもの問題」や「遊び」ではありません。内容によっては暴行罪・傷害罪・恐喝罪・名誉毀損罪など、刑法で定められた犯罪行為に該当します。

また、14歳以上であれば刑事責任を問われ、14歳未満でも家庭裁判所で処分を受ける可能性があります。いじめの被害は精神的にも深刻で、命に関わることもあります。

もし自分や周囲の人がいじめに苦しんでいる場合は、すぐに相談すること、そして証拠を残すことが大切です。法律はあなたを守るためにあります。決して一人で悩まず、助けを求めましょう。