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性病を移す行為は犯罪になるのか?故意・過失・法律の考え方をわかりやすく解説

性病を移してしまった場合、「これって犯罪になるのでは?」と不安に感じる人は少なくありません。ニュースやSNSでは、性病を移したことで逮捕されたという話を目にすることもあり、余計に心配になるでしょう。

しかし、性病を移したからといって、必ずしも犯罪になるわけではないのが現実です。法律では、行為の内容や本人の認識、相手への説明の有無など、さまざまな事情を総合して判断されます。

  この記事では、性病を移す行為が犯罪になるケース・ならないケース、関係する法律、故意と過失の違い、さらには民事責任まで、中学生でも理解できる言葉で丁寧に解説していきます。

性病を移す行為は本当に犯罪になるのか

この章では、性病を移しただけで犯罪になるのかという、もっとも基本的な疑問について整理していきます。結論から言うと、「移した」という事実だけで判断されるわけではありません。

性病を移しただけでは必ず犯罪になるわけではない

  性病に感染している人が性行為を行い、結果として相手に感染した場合でも、それだけで自動的に犯罪になることはほとんどありません。多くの人がここを誤解しがちですが、日本の法律は結果だけでなく経緯を重視します。

たとえば、自分が感染していることを知らなかった場合や、十分に注意していた場合には、刑事責任が問われないことが多いでしょう。法律は「わざとやったのか」「防ぐ努力をしていたか」を見ています。

そのため、「性病を移した=即犯罪」と考えるのは、少し極端な見方だと言えるのではないでしょうか。

実際の判断はケースごとに異なり、単純な白黒では割り切れない点が重要です。

行為の内容や相手への説明の有無で判断が変わる

  犯罪になるかどうかを分ける大きなポイントは、相手に対してきちんと説明をしていたか、そしてその上で同意があったかどうかです。

たとえば、感染していることを知りながら何も伝えずに性行為をした場合と、事前に説明し相手が理解した上で行為に及んだ場合とでは、法的な評価は大きく変わります。

また、無理やり性行為をした場合や、だまして行為に及んだ場合には、性病の感染が重く見られる傾向があります。このように、背景事情が判断のカギを握っているのです。

  「説明していれば問題ない」と単純に言い切れるわけではありませんが、説明の有無が重要な要素になることは覚えておくとよいでしょう。

性病を移した場合に問題になる法律とは

ここでは、性病を移した行為が問題になった場合に、どのような法律が関係してくるのかを整理します。刑法だけでなく、別の法律や条例が関わることもあります。

刑法の傷害罪や傷害致死罪が問題になる場合がある

  性病を移す行為で、もっともよく話題に上がるのが刑法の傷害罪です。傷害罪とは、人の体にケガや病気を負わせる行為を処罰するものを指します。

性病は病気であるため、条件次第では「体に傷害を与えた」と評価される可能性があります。特に、故意に感染させた場合には、この罪が問題になるケースが見られます。

さらに、極端に重い結果が生じた場合には、傷害致死罪が議論されることもありますが、これはかなり例外的な状況だと考えてよいでしょう。

刑法が適用されるかどうかは、故意性や結果の重大さが大きく影響します。

感染症法が関係するケースがある

  性病を移した場合、刑法だけでなく感染症法が関係することもあります。感染症法は、感染力の強い病気が社会に広がるのを防ぐための法律です。

特定の性病については、医師による届出や、本人が守るべき行動制限が定められている場合があります。これを無視して行動した結果、他人に感染させた場合には、問題視される可能性が高くなるでしょう。

ただし、すべての性病が厳しく規制されているわけではなく、どの病気に該当するかで扱いは異なります。そのため、一律に「感染症法違反になる」と考えるのは正確ではありません。

  自分の感染状況を知り、医師や保健所の指示に従うことが、法的トラブルを避けるうえで重要です。

迷惑防止条例や都道府県の条例が適用されることがある

  意外に思われるかもしれませんが、性病を移す行為が都道府県の条例に触れるケースもあります。特に、悪質な行為や社会的に問題視される行動の場合、迷惑防止条例などが適用されることがあります。

たとえば、相手をだまして性行為を行った場合や、多数の相手に感染を広げるような行動は、社会的な迷惑行為と評価されやすくなります。

条例は地域ごとに内容が異なるため、どこでも同じ扱いになるわけではありません。この点が分かりにくさの原因になっています。

  刑法だけでなく、地域のルールも関係する可能性がある点は覚えておくと安心ではないでしょうか。

故意で性病を移した場合の法的責任

ここからは、「わざと」性病を移した場合について解説します。このケースでは、法的責任が重くなりやすい傾向があります。

わざと感染させた場合は傷害罪にあたる可能性がある

  自分が性病に感染していると知りながら、相手に何も告げずに性行為を行った場合、故意があったと判断される可能性があります。

このような場合、相手に病気を負わせたとして、傷害罪が成立する余地が出てきます。ポイントは、「感染させても構わない」と考えていたかどうかです。

言い換えれば、結果を予測しつつ行動したかが重要になります。ただの不注意とは、ここで大きな違いが生まれるのです。

故意と認定されると、刑事責任が現実的な問題として浮上してきます。

悪質な場合は逮捕や起訴される可能性がある

  すべての故意感染がすぐに逮捕につながるわけではありませんが、悪質性が高い場合には話は別です。

たとえば、何人もの相手に繰り返し感染させていた場合や、強い感染力のある病気を広げた場合には、社会的影響が大きいと判断されます。

その結果、警察が介入し、逮捕や起訴に進む可能性も否定できません。実際に、こうしたケースがニュースになることもあります。

  行為の回数や態様は、責任の重さを判断する重要な材料になります。

相手に重大な健康被害が出ると罪が重くなる

  性病による影響が軽い場合と、長期の治療が必要になった場合とでは、評価は大きく異なります。

もし感染によって重い後遺症が残ったり、生活に大きな支障が出たりした場合には、法的責任も重く見られるでしょう。

これは刑事責任だけでなく、後で説明する民事責任にも影響します。被害の大きさは、判断の中心に置かれる要素です。

  結果の重大性が、処分や賠償額に直結する点は非常に重要です。

過失で性病を移した場合の法的責任

次に、わざとではなく、結果として性病を移してしまった場合について見ていきます。この章では「過失」という考え方がポイントになります。

感染に気づかずに移した場合は犯罪にならないことが多い

  自分が性病に感染していることを知らず、通常の生活を送る中で相手に感染させてしまった場合、犯罪として扱われないケースが多いのが実情です。

法律は、本人がどこまで状況を認識していたかを重視します。まったく自覚がなく、症状もなかった場合には、故意はもちろん過失も認められにくくなります。

このため、「知らなかったのに処罰されるのでは」と過度に不安になる必要はありません。

ただし、後から事情を説明できるよう、医療機関での記録などは大切になります。

注意義務を守っていたかが判断のポイントになる

  過失があるかどうかを判断する際には、注意義務を果たしていたかが重要な基準になります。

たとえば、体に異変があったにもかかわらず放置していた場合や、医師から検査を勧められていたのに受けなかった場合などは、注意不足と評価されることがあります。

一方で、定期検査を受けていたり、違和感があればすぐに受診していた場合には、責任は軽く見られやすいでしょう。

日頃の行動が、後から大きな意味を持つことになるのです。

状況によっては過失傷害が問題になることがある

  基本的には過失で性病を移した場合、刑事責任が問われることは少ないとされています。

しかし、極端に不注意な行動があった場合には、過失傷害として問題になる可能性もゼロではありません。

たとえば、医師から感染の可能性を強く指摘されていたにもかかわらず、何の対策も取らなかった場合などが考えられます。

「過失だから大丈夫」と油断せず、社会的責任を意識することが大切ではないでしょうか。

性病を移したときに民事責任は問われるのか

刑事責任とは別に、民事上の責任が問題になることもあります。ここでは、お金の問題としてどのような責任が生じるのかを説明します。

治療費や慰謝料を請求される可能性がある

  性病を移された側は、治療費や慰謝料を請求することができます。これは刑罰ではなく、損害を埋め合わせるための制度です。

通院費や薬代だけでなく、精神的な苦痛に対する慰謝料が認められるケースもあります。

特に、相手が強い不安やストレスを感じた場合には、金額が高くなることもあります。

  民事責任は、日常生活に大きな影響を与える現実的な問題です。

故意か過失かで賠償額が変わる

  民事責任においても、故意か過失かは重要な判断材料になります。

わざと感染させたと認められる場合には、高額な慰謝料が認められる可能性が高くなります。

一方で、過失の場合には、状況に応じて賠償額が抑えられる傾向があります。

同じ結果でも、そこに至る経緯が大きく影響する点は共通しています。

示談で解決するケースも多い

  実際には、裁判まで進まず、示談で解決するケースも少なくありません。

当事者同士、または弁護士を通じて話し合い、金銭の支払いなどで解決を図ります。

示談は早期解決につながりやすい一方で、内容を慎重に決める必要があります。

  安易に応じるのではなく、専門家に相談する姿勢が大切です。

性病を移された側が取れる対応や相談先

もし性病を移された可能性がある場合、感情的になってしまうのは自然なことです。しかし、冷静に行動することで、健康面でも法的な面でも不利を避けやすくなります。

病院や性病科で早めに検査と治療を受ける

  まず最優先すべきなのは、早めに医療機関を受診することです。性病は、早期に治療を始めることで症状が軽く済むケースも多くあります。

自覚症状がなくても、感染している可能性は否定できません。放置すると、後から重い症状が出ることもあるため注意が必要です。

また、医師の診断記録は、後にトラブルになった際の重要な資料にもなります。

  不安な場合は、性病科や泌尿器科、婦人科など、専門性のある診療科を選ぶと安心でしょう。

保健所に相談してアドバイスを受ける

  各地の保健所では、性病に関する無料相談や検査を行っていることがあります。

匿名で相談できる場合も多く、誰にも知られずに専門的なアドバイスを受けられる点が大きなメリットです。

治療の流れや、相手への対応についても助言をもらえることがあります。

  一人で抱え込まず、公的な窓口を利用するのは賢い選択と言えるでしょう。

警察や弁護士に相談するという選択肢もある

  相手の行為が悪質だと感じた場合には、警察や弁護士に相談するという道もあります。

必ず被害届を出さなければならないわけではなく、まずは話を聞いてもらうだけでも構いません。

弁護士に相談すれば、刑事と民事のどちらが現実的か、今後どう動くべきかを整理してもらえます。

  専門家の意見を聞くことで、気持ちが落ち着くことも多いものです。

性病を移さないために気をつけるべきこと

ここからは、トラブルを未然に防ぐために、日常生活で意識しておきたいポイントを確認します。予防こそが、最大の対策だと言えるでしょう。

体調に異変があれば性行為を控える

  違和感や痛み、かゆみなど、少しでも異変を感じた場合には、性行為を控える勇気が必要です。

「これくらい大丈夫だろう」と判断してしまうと、取り返しのつかない結果につながることもあります。

自分だけでなく、相手の健康を守るという意識が重要です。

  不安なときは、行動する前に受診する姿勢が信頼にもつながります。

定期的に性病検査を受ける

  自覚症状が出にくい性病も多いため、定期的な検査は非常に有効です。

特定のパートナーがいる場合でも、検査を受けることで安心感が得られます。

最近では、簡易検査キットなども普及し、検査のハードルは下がっています。

  自分の体を知ることが、結果的に法的トラブルの予防にもなります。

避妊具を正しく使う

  避妊具の使用は、妊娠予防だけでなく、性病予防の面でも重要です。

正しく使わなければ十分な効果は得られないため、使用方法を理解しておく必要があります。

完璧ではありませんが、リスクを大きく下げる手段であることは間違いありません。

  自分と相手の将来を守る行動として、意識しておきたいポイントです。

まとめ|性病を移す行為・犯罪・故意・過失・法的責任について

性病を移す行為は、必ずしも犯罪になるわけではありません。故意か過失か、説明の有無、被害の大きさなど、さまざまな事情をもとに判断されます。

わざと感染させた場合には、刑事責任や民事責任が重くなる可能性がありますが、知らずに移してしまった場合には、責任が問われないことも多いのが実情です。

  大切なのは、正しい知識を持ち、相手への配慮と予防意識を忘れないことではないでしょうか。