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売春が犯罪になるのはどんなとき?買春や勧誘・周旋の関係を解説

街中やネット上などで時折話題に上がる「売春」「買春」という言葉。これらの行為が違法なのかどうか、正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。

実は、売春そのものには罰則がない一方で、第三者が関与することで犯罪となるケースが存在します。また、未成年との関係となると、刑事罰の対象となる可能性が一気に高まります。

この記事では、売春・買春に関する法律と、どんな行為が犯罪として扱われるのかをわかりやすく解説します。自分や周囲を守るためにも、正しい知識を身につけておきましょう。

売春が犯罪になるのはどんなとき?買春や勧誘・周旋の関係を解説

売春自体には罰則がありませんが、第三者が介在した場合や未成年が関わると、犯罪として処罰されることがあります。以下でその理由を見ていきましょう。

売春・買春そのものには罰則がない

日本の法律では、売春行為そのものには直接的な罰則がありません。これは「売春防止法」が、売春する女性を保護することを目的にしているためです。つまり、売春したという事実だけでは、逮捕されることは原則としてありません。

しかし、それはあくまで「売春しただけ」の場合に限ります。売春行為を助けたり、利益を得たりする第三者が関与すると話は別です。また、売春の勧誘や斡旋、売春のための場所提供などの行為には明確な罰則があります。

さらに、売春相手が18歳未満である場合や、無理やり行わせた場合には重い罪に問われることになるため、十分な注意が必要です。

つまり、「売春は違法ではないが、売春に関わる行為は違法になることが多い」というのが正確な理解です。

勧誘・周旋・場所提供など第三者関与で犯罪になる

売春行為そのものには刑罰がありませんが、第三者が売春を手助けしたり、利益を得ようとした場合には、売春防止法により処罰されます。

たとえば、路上などで売春を呼びかける行為は「勧誘罪」に該当します。また、売春希望者と女性を仲介することは「周旋罪」となり、刑罰の対象です。

さらに、売春行為が行われる場所を提供した人や、管理していた場合には「場所提供罪」や「管理売春罪」として重い罰則が科せられます。

このように、売春に直接関与していなくても、その周辺行為を行っただけで犯罪になるケースが多いのです。自分はただの仲介役や場所を貸しただけと思っていても、それが立派な違法行為になる可能性があるのです。

買春は犯罪?売春との違いや罰則をわかりやすく解説

買春についても、売春と同じく「事実だけ」では基本的に犯罪にはなりません。ただし、未成年との関係や悪質なケースでは法律違反となります。

買春行為の事実だけでは罰せられない

買春も、単に行為があったという事実だけでは原則として処罰の対象にはなりません。これは売春防止法が売春女性を保護する目的であるのに対し、買春側を直接取り締まる法律が限定的であるためです。

ただし、買春のために相手に声をかけたり、仲介業者を使った場合など、周辺の行為によっては処罰されることもあります。特に勧誘行為は、場合によっては公然わいせつや迷惑防止条例違反となることもあるため注意が必要です。

また、相手が18歳未満の場合は、状況が大きく変わります。

相手が18歳未満の場合は児童買春罪で処罰される(5年以下懲役・300万円以下罰金)

相手が18歳未満だった場合は「児童買春・児童ポルノ禁止法」により処罰されます。この法律では、たとえ本人の同意があったとしても、金銭や物品などの対価と引き換えに18歳未満の子どもと性交や類似行為を行うと、児童買春罪が成立します。

児童買春罪の罰則「5年以下の懲役または300万円以下の罰金」と非常に厳しいものです。さらに、相手が13歳未満であった場合は、同意があっても強制性交等罪が適用されることもあります。

未成年かどうか知らなかったという言い訳は、場合によっては通用しないこともあるため、非常にリスクの高い行為と言えるでしょう。

したがって、「知らなかった」では済まされないのが未成年との買春行為です。後から後悔しても遅いため、絶対に関与しないことが重要です。

売春の勧誘はなぜ犯罪になる?具体的な罰則について

売春の勧誘行為は、相手が売春を行うように仕向ける行為です。これは売春防止法によって明確に禁止されており、厳しい罰則があります。

街頭などで誘引する行為は勧誘罪(6ヶ月以下懲役または1万円以下罰金)

売春を勧誘する行為は「勧誘罪」に該当し、6ヶ月以下の懲役または1万円以下の罰金が科されます。

たとえば、街頭で男性に声をかけて「お金をくれたら体を売る」といった内容を話すことや、ネット上で自分の体を売るような投稿をして相手を誘う行為などが該当します。

このような行為は、「相手に売春を勧めた」と見なされ、軽い気持ちでも処罰の対象となる可能性があります。特に公共の場で声をかけるような行為は、通報されやすいため注意が必要です。

「たった一言の誘いでも、法律上は勧誘と判断される可能性がある」という点はしっかり覚えておきましょう。

売春の周旋とは?どんな行為が犯罪になり罰則があるのか

周旋とは、売春をしたい人と買いたい人の間をつなぐ仲介行為のことです。これには複数の犯罪が関わってきます。

買春希望者と提供者を仲介する行為はあっせん罪(2年以下懲役または5万円以下罰金)

売春したい人と買いたい人を結びつける「周旋」は、売春防止法第6条により処罰される違法行為です。具体的には2年以下の懲役または5万円以下の罰金となっています。

例えば、「この人がお金を払ってくれるから、あんた体売ってきなよ」と誰かに紹介するような行為が該当します。直接的な利益を得ていなくても、「手助け」したこと自体が罪に問われることになるのです。

そのため、「人助けのつもりだった」といった言い訳は通用しないことが多く、関与することで自身が犯罪者になるリスクが非常に高くなります。

売春契約を締結する行為も契約罪(3年以下懲役または10万円以下罰金)

金銭などの対価を約束して売春行為を事前に合意することは「契約罪」となり、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。

これは単なる仲介にとどまらず、「いつ、どこで、いくらで性交する」といった具体的な取り決めを行った場合に成立します。

口約束であっても、その内容が明確であれば契約が成立したとみなされる可能性があります。文字に残っていなくても「LINEでやりとりした」などの証拠があれば立件されることもあります。

「言っただけ」でも、契約とみなされれば立派な犯罪です。

売春の場所提供は場所提供罪(3年以下懲役・10万円以下罰金、業としてなら7年以下・30万円以下罰金)

売春を行う場所を提供した人には、「場所提供罪」として処罰が科されます。これには、3年以下の懲役または10万円以下の罰金という罰則があり、場所提供を業として行っていた場合は、7年以下の懲役または30万円以下の罰金にまで引き上げられます。

たとえば、知り合いに「このアパート使っていいよ」と言って売春の場に利用させたり、ホテル経営者が売春と知りながら部屋を貸したりした場合が該当します。

また、シェアハウスや個人所有のアパートでも、売春目的と知りながら使わせた場合には犯罪とされます。

「知らなかった」では済まされないケースも多いため、施設や部屋を貸す際は注意が必要です。

管理売春を営む行為は10年以下懲役・30万円以下罰金

売春を組織的に管理している場合は「管理売春罪」に該当し、10年以下の懲役および30万円以下の罰金という非常に重い罰則が科されます。

これは、いわゆる「風俗店の経営者」などが売春行為を管理し、金銭的利益を得ているようなケースが対象です。実際に現場にいなくても、組織の中で管理・監督の立場にあれば罪に問われます。

このような行為は、被害者が未成年だった場合や強制的に売春させていた場合には、さらに重罪として処罰される可能性があります。

組織ぐるみの売春行為は、非常に重く見られる犯罪です。

売春や買春に関する法律と犯罪に問われるケースとは

売春や買春は、売春防止法や児童買春・児童ポルノ禁止法などの法律でさまざまに規定されています。違法かどうかは、それぞれの行為の内容と状況によって異なるのです。

売春防止法の対象範囲と定義(売春=対価で性交すること)

売春防止法における「売春」とは、金銭その他の対価と引き換えに性交する行為を指します。この法律では、売春そのものには罰則がなく、売春に至るまでの周辺行為や、第三者の関与に対して処罰規定が設けられています。

つまり、売春を「させる」「すすめる」「場所を貸す」「利益を得る」といった行為に対して、厳しい法律が適用されるということです。

また、売春する女性を「保護の対象」として扱う方針であるため、本人に対しては刑罰を与えるのではなく、更生指導や福祉的措置が取られることもあります。

法律の目的は、売春を根絶することと、売春によって被害を受ける女性を守ることにあるのです。

条文別罰則一覧:勧誘(第5条)、周旋(第6条)、契約(第10条)、場所提供(第11条)など

売春防止法には、さまざまな条文で罰則規定が定められています。以下に主な条文とその内容を紹介します。

  • 第5条:勧誘罪 – 街頭やネットで売春を持ちかける行為。6ヶ月以下の懲役または1万円以下の罰金。
  • 第6条:周旋罪 – 売春の仲介をする行為。2年以下の懲役または5万円以下の罰金。
  • 第10条:契約罪 – 売春に関する契約を締結する行為。3年以下の懲役または10万円以下の罰金。
  • 第11条:場所提供罪 – 売春の場所を提供する行為。3年以下の懲役または10万円以下の罰金。
  • 第12条:管理売春罪 – 売春を管理・運営する行為。10年以下の懲役または30万円以下の罰金。

これらの規定に違反すれば、重大な刑事責任を問われる可能性があります。

児童買春・児童ポルノ禁止法が適用される場合(未成年相手)

相手が18歳未満である場合は、売春防止法ではなく「児童買春・児童ポルノ禁止法」によって厳しく処罰されます。

この法律は、「子どもを性的対象とした商業的搾取から守る」ことを目的としています。児童買春に該当する場合、たとえ本人の同意があったとしても犯罪となります。

たとえば、SNSで知り合った女の子が「18歳以上です」と言っていても、実際に18歳未満であれば犯罪が成立します。年齢確認を怠ったことが過失として判断されることもあるのです。

「知らなかった」では済まされないほど、児童買春に対する法律は厳しいものです。絶対に関与しないようにしましょう。

売春・買春・勧誘・周旋の犯罪に関するよくある疑問

ここでは、売春や買春に関してよくある疑問を取り上げ、法律的な視点からわかりやすく解説します。

売春・買春しただけでは逮捕されないの?

前述の通り、売春・買春の行為そのものには、原則として刑罰がありません。ですが、第三者が関与していたり、場所の提供があった場合には、その周辺行為に対して処罰されます。

また、買春相手が未成年だった場合には、売春・買春そのものが違法となるため逮捕される可能性があります。

状況や関係者の関与によって変わるため、単純な「やった・やらない」では語れないのが現実です。

未成年かどうか知らなかった場合はどうなる?

未成年と知らなかったという主張は、必ずしも免責にはなりません。法律では、年齢確認を怠ったことが「過失」と判断されることもあり、有罪判決が下ることもあります。

たとえば、SNSで知り合った相手が「18歳以上」と言っていても、見た目ややりとりの内容で疑わしい点があれば、確認を怠ったと見なされる可能性があります。

したがって、「知らなかった」「騙された」という言い訳は通用しない場合が多いのです。

出会い系サイトで誘っただけでも罪になるの?

出会い系サイトで売春を勧誘する行為は「勧誘罪」に該当する可能性があります。たとえば、「条件ありで会える人募集」といった投稿は、売春の勧誘と判断される可能性があります。

このような投稿やメッセージは、証拠として残りやすく、警察に摘発されるリスクも高くなります。

軽い気持ちで書いた内容が、大きな犯罪に発展することもあるため、絶対に行わないようにしましょう。

自分から客を誘ったら逮捕されるの?

売春目的で客を誘った場合、それは「勧誘罪」として処罰される可能性があります。

売春する本人であっても、勧誘行為を行えば罪に問われることがあるのです。

「お金が欲しかった」「断られると思っていた」といった理由では免責にはなりません。

勧誘行為は、刑事事件として扱われる可能性があるため、絶対に行ってはいけません。

まとめ:売春が犯罪になるケースと買春・勧誘・周旋の罰則をしっかり理解しよう

売春や買春について、「なんとなく違法なイメージがあるけど、実際のところどうなの?」と疑問を抱いている人も多いかもしれません。今回の記事を通して、売春や買春そのものには罰則がない一方で、それに関わるさまざまな行為が違法となることがわかったのではないでしょうか。

特に、未成年との関係や第三者の関与(勧誘・周旋・場所提供・管理など)は、厳しい刑罰が科される可能性があります。法律の網は意外と広く、軽い気持ちで行った行動が重大な犯罪につながることもあるのです。

まとめると、以下の点を押さえておくことが重要です:

  • 売春・買春そのものは原則として処罰されないが、周辺行為は違法になる
  • 勧誘・周旋・契約・場所提供などには具体的な罰則がある
  • 18歳未満との売買春行為は「児童買春罪」となり、重い刑罰が科される
  • 「知らなかった」「騙された」では済まされないこともある

法律に関する正しい知識を持つことは、自分を守るうえで非常に大切です。無意識のうちに法律違反となってしまわないよう、この記事で得た情報をぜひ活用してください。

売春や買春に関して迷いや疑問がある場合は、一人で悩まず、弁護士など法律の専門家に相談することをおすすめします。無知が罪になる前に、正しい判断を心がけましょう。